この頃、世の中狂っています。家庭の崩壊、親殺し、子殺し。無差別殺人。役人の無責任。それに、この異常気象。地球の温暖化については、専門の学者たちは、あと五年のうちに思い切った措置をしないと、地球はポイント・オブ・ノーリターンを過ぎてしまうと警告していますが、世界全体の政治は何の決断も下せずにいます。
しかし、何よりも割り切れない、納得できないのは、コツコツ働いて確かに物を作り出している者たちが一向に報いられず、札束を抱えて使う者たちだけが儲けて太っていく経済の仕組みです。そのいい例がアメリカだ。紙屑に近くなったドルを印刷し続け、その使い道の投機で油の値段をつり上げ、穀物をつり上げ、人々の生活を圧迫し続けて顧みない。この日本でも同じことが起こりつづけている。汗をかいた努力は報いられず、札束をふり回す輩ばかりが太っていく。利益主義の人間たちが、ある理屈をかざしてそれを是としても、天がこんな社会のゆがみを許す訳はない。それがこの人の世の本当の摂理と思います。
政治は、そうした国民の声に応えてきたのか。自戒を込めて申し上げれば、この一年、政治は国民の声と遠く離れて政局に明け暮れ、党利党略に流されてきました。いま、国民の関心事と政治が、大きく離れてしまった。そのズレをどうしても正さなければならない。それが今回、私が自民党の総裁選挙に立候補した理由です。
十二日間の選挙戦。他の四人の候補者とともに、北は北海道から南は鹿児島まで一万千百キロを駆け回りました。後継者がいない。丹精を込めてものを作り売っても、それだけでは到底食べていけない。農林水産業に従事する方々の切実な訴えが胸に刺さりました。シャッター通りを歩き、市場を回り、厳しい商店街の現状に触れました。子供たちを育てる先生の声、障害者の自立を支援する皆さんの声、夜も寝ずに病人を助けるお医者さん看護師さんの声、様々な国民の生の声を、改めて聞かせて頂きました。
私は全国で、行政改革で徹底的に無駄を省くこと、規制改革で新しい経済発展を生み出すこと、改革を継続することを訴えました。国民の皆さんの不満と不安の源である社会保障については、三年間の集中改革期間を設けて、医療・介護・年金を一体的、抜本的に見直し、どのようなサービスを提供するかを具体的に示すこと。そしてそのための費用がどの位かかるかを率直に訴え、納得をして頂いた上で、国民の皆様にご負担をお願いしたいと訴えました。どのような社会保障制度を作るか、どれだけのサービスを提供するかだけを訴え、その費用から目を背けるような政治であってはならないと、私は思うからです。それでは国民の本当の納得は得られず、国民の将来に対する不安を解消することはできないと、私は信じます。
総裁選挙を通じ、私は全国を回り、地方と都会が対立することは全く意味がないし、むしろ日本の将来にとって憂うべきことだと主張しました。その訴えに多くの方が呼応してくれたことを、とても心強く感じています。皆さんの声を聞き、いま政治が取り組むべき課題を、改めて体得しました。これからはその課題をしっかりと受け止め、どうやって政策として具体化し、国民の皆さんにお返しするかです。この社会の歪みをどうやって正すか、課せられた使命の重さを改めて実感しています。
私は、民主党の野田佳彦さんが共同代表をつとめる超党派の政策集団「せんたく議連」において、小沢鋭仁さんと共にマニフェスト分科会の座長をつとめ、国民に分りやすいマニフェストを書こう、そのための統一基準を作ろうという運動をしてきました。マニフェストに掲げられた政策を実現する財源はあるのか、実現までの工程はどのようになっているか。次の総選挙に向けて、国民がしっかりと吟味できるマニフェストを作り、示していきたいと思います。その上で、国民一人一人が政党の違いを比較し、理解し、選択をする。そういう選挙をしたいと考えています。
日本にはまだまだ、目には見えにくい底力がひそんでいます。新しい技術の開発力、勤勉性、鋭い感性、やさしい心づかい。それを束ね、やる気さえ起こせば、この日本は必ず新しい繁栄を迎えることができると信じています。私はその尖兵となって、古い制度、ゆがんだ価値観と戦うつもりです。福澤諭吉は、「立国の志は私なり。公にあらざるなり」そういって、国民の奮起を促しました。この国をより良くする力は、一握りの官僚が、政治家が、リーダーが持っているのではありません。その力は、皆さん一人ひとりの手の中に、胸の中にあるのです。
「保守」とは、変わらぬ信念を持つことです。
「改革」とは、変える勇気を持つことです。
国民の皆さん。この国をよりよき国にして子供達に手渡す改革に参加して下さい。一緒にこの国を変えていきましょう。


