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さる6月18日をもって、1月20日から開催されていた第164回通常国会が終了しました。今回の国会は、私としては始めての常任委員長、法務委員長と言う大役を拝命し、委員会の中立・公正な運営に汗を流した国会でした。

法務委員会で審議された法案のうちでも、共謀罪については、マスコミ等を通じてご存知の方も多いと思います。「飲み屋で盛り上がったサラリーマンが、横暴な上司を殴ってやろうと合意するだけで逮捕される」とか「社長が譲歩するまで、徹夜も辞さない団交をやろうと決めた労働組合が逮捕される」とか、はては「合意せずとも目配せしただけで逮捕される」などと、おどろおどろしい記事が毎日のように新聞を飾りました。これらは誤解に基づく記事で、このような例は、どれも共謀罪にはなりません。

共謀罪の審議については、国民の関心が高く、また多くの方々から不安の声が寄せられていることにも配慮し、慎重かつ徹底的な審議を行い、また野党とも誠実な交渉を重ねました。あいまいな部分、誤解を与えかねない部分は、はっきりと法律に明記しました。その結果、最終的な与党案では、1. 共謀罪が対象とする団体を、5年以上の刑が定められているような犯罪の実行を目的とする団体、に限ること。2. 共謀をしただけでは処罰されず、共謀の後、その実行に必要な準備行為等が行われた場合に限り処罰されること。などを法律に明示しました。また他にも様々な改良を加え、国民の方々の不安は、しっかりと解消できる法案となりました。

ここで、改めて「共謀罪」とは何なのか、整理してみたいと思います。そもそもこれは、平成12年(2000年)11月の国連総会において採択され、平成15年(2003年)9月に発効した「国際テロ等を防止するための条約」に端を発します。この条約では締結国に対し、国際的犯罪防止とその廃絶のための努力と、そのための国内法の整備を義務付けています。現時点でこの条約には、G8では英・米・加・仏・露が締結済み、独・伊も国内手続きを終えて作業中です。また、世界119カ国が締結を済ませています。近年の国際的なテロは、計画が高度かつ緻密で、テロ組織の指揮命令系統に基づいて整然と実行されるため、実行段階に移ってからの取締りは非常に難しいのが現実です。つまり、テロの防止には、テロが実行される前の計画段階でこれを取り締まり、テロを未然に防ぐことが不可欠なのです。そのために、この条約は、締結国に対し国内法で、組織的な犯罪集団が、犯罪を共謀した段階でこれを処罰できる「共謀罪」を新設すること、もしくはそのような団体に参加することを処罰できる「参加罪」を新設すること、を義務付けています。つまり、この法律はあくまでも国際テロ組織のような犯罪組織に対抗するための法律で、冒頭のような普通のサラリーマンや、労働組合を取り締まるための法律ではありません。当然、それらの団体は共謀罪の対象にはなりません。だからこそ、平成15年の国会で、この条約を締結すること、つまり共謀罪を新設することは、自民・公明・民主・共産党の賛成により既に承認されているのです。しかし、それから7度目の国会を経る間に、法務委員会のメンバーも変わり、その間にこの法案への、反対のための反対や、誤った報道が世の中に流れ、誤ったイメージが定着してしまいました。

丁寧な審議、野党との誠実な交渉の結果できあがった、与党の最終案を見た民主党の理事は、ここまで踏み込んだ案とは思わなかったという顔でした。与党案はそれほどに画期的な、国民の不安を払拭する内容だったのです。それでも彼らはこれが与党の案だというだけの理由で反対を続けました。そこで、与党側は日本政府が国際社会で決めた約束を果たすことを第一に考え、与党の案ではなく、民主党の提出した案でかまわないので、この法案を成立させたいと民主党に提案しました。自分たちの出した案ですから、民主党も賛成するのが普通です。それが一夜明けるとだめだ、ということになる。反対の理由は、どれも本質的な話ではありません。この問題を後半国会の焦点にして、与野党対決を演出したい、という判断といわれても仕方ありません。その結果、テロに対抗するためのこの法律が、党利党略の道具にされたことは、法務委員長として残念でなりません。

委員会での質疑

共謀罪以外にも、法務委員会で審議された案件はいくつかあります。入管法の改正では、1. 特別永住者等を除く外国人に、上陸審査の際に指紋等の個人識別情報の提供を義務付けること。2. テロリストの入国を阻止また強制退去等させるための規定の整備等を行うこと。3. 来日する船舶等の長に乗員・乗客名簿の事前提出を義務付けるための規定の整備等を行うこと。などのテロ対策の強化が決まりました。同時に出入国手続を簡単かつスピーディーにするため、日本人及び特別永住者等の外国人については、事前に指紋等の個人を識別するための情報を登録いただいた方に限り、自動化ゲートを利用したスピーディーな出入国を可能にすることも図られました。幸いにもわが国はいまのところテロの被害にあってはいませんが、だからといってテロの脅威にさらされていないわけではありません。自分たちの身を守るのは、自分たちの努力しかないのです。そしてもう一つ重要なのは、今回の改正によって記録される膨大な量の個人情報の厳格な管理です。行政機関によって扱われる個人情報は、もちろん法律の厳格な規制を受け、目的外の使用は認めらません。またその管理には慎重の上にも慎重を期し、万が一にもデーターの流出等の無いよう、何重ものセーフティーネットが張られています。しかし、だからといって安心するのではなく、私たちも常に情報の管理には目を光らせ、間違いなく厳格な管理が行われるように監視していかなければなりません。

委員会での質疑

また、組織犯罪処罰法の一部改正、被害回復給付金支給法の制定も決定しました。これは犯罪者が犯罪行為によって得た財産を没収し、被害者にお返しするための法律です。念頭に置かれているのは、マスコミでも大きく取り上げられた「五菱会」の事件です。ヤミ金融グループはマネー・ロンダリングのため、犯罪の利益をひそかにスイスの銀行口座に隠していました。同グループがスイスに送金したのは、何と合計約51億円。しかし、犯罪の発覚とともに、スイス・チューリヒ州当局が口座を凍結、没収しました。スイス当局からは、没収した財産を日本に返したいとの申し入れを頂いていたのですが、残念ながら日本にはそのための法律がなく、仮に財産が返還さても、被害者にお返しできない状況でした。そこで今回の法律改正となったわけです。改正の結果、犯罪の収益が日本に返還されれば、資金洗浄のため外国に送金され、没収された犯罪収益が2国間交渉で返還される初めてのケースとなります。また、没収された犯罪収益が国により被害者に分配されるのも初めてです。

このように法務委員会では皆さんの生活にも関連する重要な法案の審議をしています。皆様も六法全書をご存知と思います。六法とは、憲法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法の六つの法律のことで、いずれも日本の基本となる法律です。法律の中の法律とも言われます。法務委員会はいわゆる六法のうち、憲法を除く他の五つの法律についての審議をする委員会です。国の基本、いわば背骨となるような法律ですから、あまり頻繁に変わるようでは困ります。しかし、近年、社会情勢が大きく、そして急激に変わる中、個別の法律を変えるだけでは事が足りず、基本の法律にまで立ち返って見直さなければならない事柄が増えています。自由経済における、自由競争の基本は、公平なルールを決めることです。土俵の形が歪んでいたのでは、公平・公平な競争などできないからです。そんな社会の土俵作りをするのが、法務委員会なのです。法務委員長として、激動する社会の変化にマッチしたルールを作り、また、国民の皆様のご意見を大切にしつつ、この国の活力を維持できるような審議を、今後ともこころがけて参ります。

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