4月1日、日本に新しく2つの株式会社が誕生しました。「成田空港株式会社」と「東京地下鉄株式会社」です。どちらもこれまで私が手がけてきた特殊法人改革による民営化の結果、新たに誕生した株式会社です。
まずは東京地下鉄。愛称もこれまでの「営団地下鉄」から「東京メトロ」へ変わり、シンボルマークもサブウェイ(英語で地下鉄)の「S」からメトロ(フランス語で地下鉄)の「M」に変わります。昭和16年に、当時の「東京地下鉄道」と「東京高速鉄道」が合併して誕生した、帝都高速度交通営団が60年以上にわたる歴史に幕を下ろすことになります。当初は政府が株の約53%を、東京都が約47%を保有する特殊会社としてスタートし、現在建設中の13号線の建設が終わり次第できるだけ早い完全民営化を目指しています。
今回の民営化に伴い様々な新しい試みも始まっています。皆さんがすぐに気づくのはユニフォームの変更かもしれません。今回は12年ぶりの変更だそうです。これまでの制服はとてもオリジナリティにあふれたうぐいす色だったので、今回の紺色の制服には、賛否両論あるそうです。また、これまで一度も作られたことがなかったテレビCMが始まりました。井川遥さんと山田孝之さんによる初のテレビCMをご覧になった方も多いと思います。
そして、もうひとつ、大きく変わったのが駅名の表示の仕方です。これは私の担当する観光立国「ビジット・ジャパン・キャンペーン」にも関係があります。日本の鉄道、特に東京の地下鉄は非常に便利で、正確で世界に誇れるものでしたが、反面、路線が複雑で、表示も日本語がメイン。東京を訪れる外国の方々からは「慣れれば便利だが、初めのうちは使いにくい。観光客には利用できない」とのご意見が多く寄せられていました。観光立国の実現は、まず利用者の立場にたったサービスから。そこで各駅の駅名を表示するプレートにアルファベットと数字をつけることになったのです。

例えば東京駅から浅草に行くには「東京駅から丸の内線に乗って銀座で乗り換え、銀座線に乗って浅草で降りる」と言わなくてはなりません。外人に説明するのも大変だし、初めて日本にきた人だったら、車内から駅名を見分けるのも大変です。
新方式によれば、これは「MラインにM17駅からM16駅まで乗って、Gラインに乗り換え、G19駅で降りる」となります。Mラインは丸の内線のM、M17駅といえば丸の内線の端から数えて17番目の駅、つまり東京駅のことです。これなら言いやすいし、外国の人でも、乗ってから何番目の駅か、数えればすぐわかります。
まだまだ改良の余地もありそうですが、このような分かりやすいサービスが始まったのもまさに民営化の結果なのです。
もう一つ新しく誕生するのが、成田国際空港株式会社です。正式名称も「新東京国際空港」から「成田国際空港」になります。これまでも、すでに成田空港の呼び名に親しんできた利用者にとっては、いままでの名前の方がむしろ不思議かもしれません。空港の名前が変わったことで、新東京空港署も成田国際空港署にかわります。名前だけでなく利用者に親しまれる警察を目指し、笑顔の応対を心がけたり、英語のできる人を配置したりしたいと意気込んでいます。 税関も、「?」マークの看板を新設し、預けた荷物が見つからない旅行客の方に対応したいとのこと。


もう一つ、これも先ほどのビジットジャパンと関連があるのですが、これまで外国の方から評判が悪かったのは、日本の入国審査待ちの長い列でした。私のところにも「日本人より時間がかかり、いつも外国人の列の方が長い」、「日本人の列がなくなっても、空いている日本人向けブースで対応してくれず、外国人向けの長い列に並ばされる」との意見が寄せられていました。そこで、まずは実態調査。法務省と共同で調べたところ、外国人の入国審査は日本人の約3倍。当然列の長さも3倍。日本に一人でも多く外国からのお客さんを呼ぼう、と頑張っているとき、日本についたお客さんが直面するのがながーい列では、日本の第一印象が好いわけがありません。そこで、外国人を空いている日本人用ブースに振り分けたり、待ち時間の表示をしたりなどの対策を始め、長い列の解消に努めています。


さらに利用者にとって便利な新サービスも考えられています。名付けて「手ぶら旅行」。新会社が航空各社や宅配便の会社と協力して進めています。その仕組みは、まず、利用者は出発する前に自宅に荷物を宅配業者に取りに来てもらいます。荷物にはICチップを付けられ、その情報によって自動的に飛行機に積み込まれ、利用者はそれを現地の空港で受け取る、というわけです。さらに、最新鋭の携帯電話を利用した「チケットレスサービス」など、新しい技術によって搭乗手続きのスピードアップを目指しています。
国鉄の民営化の時、「駅員の対応が良くなった」とよく言われました。お客様あっての民営化。接客態度はその基本です。そのために、顧客満足推進室を設置、さらに「お客さまの声ボックス」やホームページなどに寄せられた苦情をデータベース化。全社員でそれを見ることで「マイナスをプラスに変えよう」としています。


成田国際空港株式会社の最大の課題は何と言っても、世界一高いといわれる着陸料の引き下げです。成田空港の国際線の着陸料はジャンボ機一機あたり約95万円。アジアだけでなく、米国やヨーロッパの空港も上回っています。香港国際空港は成田の半分の着陸料を武器にすでに旅客数、貨物量とも成田を上回っています。中国・上海や韓国・ソウルでも空港の整備が着々と進んでいます。私も海外の民営化された空港をいくつも見てきましたが、成功している海外の空港はどこも、着陸料が安い。なぜか、彼らは着陸料以外で儲けているからです。どこもショッピングセンターやテナント料の収入で全体の半分以上を占めています。ところが、成田では航空収入が七割、それ以外が三割。これをいかに増やすかが今後の経営のカギを握ります。ただし、成田に関しては、それも決して簡単ではありません。これまでの空港建設の経緯や、騒音問題などで地元の方々との共生が、成田空港では不可欠だからです。地元の方の店と客を取り合ってまで直営店を増やすのは難しい、というのが空港の悩みでもあります。世界一高いといわれる着陸料も、背景には、長い時間と多額の費用を要した建設の経緯と空港警備コストなど、成田の事情があるのです。
羽田に四本目の滑走路を作る計画も進んでいます。四本目の滑走ができれば、国際線が3万便以上就航します。それでも、成田が国際線の基幹空港であり、羽田が国内線の基幹空港であるという役割分担はかわりません。成田の重要性はいささかも変わりません。成田空港が一日もはやく平行滑走路を完成すること。そして、民間の経営センスを発揮し、経営努力で着陸料を引き下げ、国際的に競争に打ち勝っていくことが必要なのです。


