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ポリティカにっぽん
石原のぶてる関連記事
早野透(編集委員)
「これからもずっとこんなことになるんですかあ」
国会の中で夜明かししてしまった自民党の女性職員が悲鳴をあげていた。参院選挙で負けたせいで、ここまで与野党交渉に苦しむことになるのか、もうヘトヘト……。
○活躍する「新人類」
金融再生法案をめぐる攻防を見ていたら、国会も変わったな、という点がいくつもある。まずは自民党案を下ろして野党案を採用、それを修正するという決着の姿だ。かつての自民党感覚だったらメンツ丸つぶれ、首相の進退にもかかわったでろう。
よくまあ我慢しているな、と思うのは宮沢喜一氏のことである。橋本龍太郎内閣当時には、党側の立場でこの金融再生プランをつくり、小渕恵三内閣では乞われて蔵相となって、国会答弁をほとんど一手に引き受けている。
それを自民党がころりと引っ込めて、野党案の丸のみである。「著作権をほしがるほどのものじゃない」しゃれのめしていても、宮沢氏の心中は「無く子と地頭には勝てぬ」ということではないか。火事場の騒ぎに乗じて、大蔵省の財政・金融分離まで掠めとられては何をかいわんや、ということだろう。
昔だったら、殿の一大事とばかり宮沢派の面々が動き出して野党との折衝に走りまわるところではある。が、今の派閥にはそんなパワーはない。自民党と社会党が国会を仕切っていたときのように、国対委員長会談、幹事長書記長会談などと整然たるセレモニーがあったわけでもない。
では、どこでだれが宮沢氏も顔をしかめるような野党との妥協をやってのけたのか。「政策新人類」とはうまいネーミングだ、どうやら確信の所はこれら実務家たちのレベルの協議で決まったいえるようである。 自民党でいえば、例えば石原のぶてる、塩崎恭久、渡辺喜美ら、当選3回以下の若手の諸氏。「金融のことは難しく専門的だから、若くてもよく勉強している連中にゆだねることになる」とかねがね加藤紘一前自民党幹事長がいっていたのがこの人たちだ。
石原氏はテレビ記者出身、「三月の資本注入は失敗だったと反省しなければ」などと政府に具合の悪いことを自然に言う。聞いてみると、かつて自民党財政部会長をしていて、大蔵省のいうことがずいぶん間違っていたことに気づき、これは自分で考えなければ、と思ったという。
塩崎氏は米ハーバード大を出たれっきとした国際派で日銀出身。「民主党のいう破たん銀行の国有化も一理ある」と早くから語っていた。「我々平社員は」が口癖の渡辺氏は父親の故美智雄氏譲りの庶民派ムード、住宅ローンの軽減策に取り組んでいる。 今回の折衝でいえば、これまた民主党の側の「政策新人類」、例えば弁護士出身で誠に能弁、ち密な枝野幸男氏らとツーカーで議論した中身を、それぞれ「本国」と呼ばれる党の上のラインに持ち上げて固めていく。むろんそこでは、若い者が何をいうかと大波小波はあるけれど、最後は小渕首相に花を持たせてとりあえずは決着となったということだろう。
○アバウト通用せず
「自民党がいささか混乱しているのは、法案の中身が分かるのは若い人で、彼らは党内の掌握力がない。党内を仕切ることが出来る幹部は中身がよく分からない、といったことだったのではないか」とある長老議員はみる。
自民党といえば、右肩上がりの繁栄の時代にはそれぞれの選挙区に国の予算を分捕ってくるのが仕事で、、その他のことはおおむね官僚まかせでよかった。ところがこのグローバル化時代、それが生活に直結するとあっては、議員もアバウトでは実際のところ役に立たない。そこで彼ら「政策新人類」の登場となったのであろう。
「彼らは派閥はもとより政党への帰属意識も薄い。それもそうだ、これからずっと自民党が政権にいる保証はないし、官庁半減となれば大臣になれるまで30年かかる。それまで我慢して、待ってもいられないだろう」とくだんの長老議員。
派閥のおん念やら腕ずくのポスト争い、そんな「政党政治」より「政策政治」のニューウェーブが自民党を少しずつ変えている。
平成10年 9月22日(火)朝日新聞 朝刊より
