マスコミ語録

メディアに掲載された石原伸晃関連記事を以下よりご覧頂けます。

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受験ジャーナル6月号

シリーズ公務員制度改革
石原伸晃
行政改革・規制改革
担当大臣に聞く

インタビュアー
慶応大学総合政策学部教授 草野厚

これまで官僚の方々を中心にお話を聞いてきた今シリーズも終盤。そこで今回は、行政改革担当大臣として公務員制度改革に取り組む石原伸晃氏にご登場いただき、政治家として求める公務員制度改革、現在の進捗状況、改革に向けての意気込みなどを伺った。

草野:政治家の立場から見て、現在の公務員あるいは公務員制度にはどのような問題があると思われますか。

石原:私は子供の頃、公務員というのはすばらしい仕事だと思っていました。国民の皆さんから尊敬され、働いている方も誇りを持っていたと思います。しかしその後、不祥事が起こったり、前例踏襲の体質が変わらず、世の中の大きな変化に対応できないなど、さまざまな問題が出てきた。公務員に対する世間の見方も変わり、コスト意識やサービス意識がないといったような国民の不平・不満もかなり顕在化してきました。そこには、やはり公務員自身の意識の問題があるのではないでしょうか。それを変えるためには、公務員制度が抱える問題、まずは、その根底にある採用や育成の仕組みを変えていく必要があります。昔のように、過去の積み上げだけを重視するのではなく、新しい時代の行政にふさわしい人が入ってこれるような。たとえば大胆な発想や決断力を持つ人、また公務員という、いわば日本で一番大きなシンクタンクを引っ張っていけるリーダーシップのある人、そうした人材を採用し、育成する仕組みを構築していくことが重要であると思います。

草野:大臣は今回の改革について「公務員の公務員による公務員のための改革であってはいけない」と、記者会見で何度もおっしゃっています。これは具体的にどういうことですか。

石原:中央省庁の再編に続き、その器に魂を入れるということで今回の公務員制度改革がスタートしました。改革に当たり、各省の担当者の話を開くと、現場の人が一番問題だと思っているのは、希望する人材を思うように採用できないということでした。今の制度では学力偏重で、大胆な発想やリーダーシップを持つ人が来てくれないと。優秀な人材に来てもらうには「アメ」の部分も必要でしょう。だからといって天下りができますよ、などということが「アメ」であってはいけない。自分たちの都合のいいように制度を変えてしまう、そんな改革であってはいけない、という自戒の念を込めて申し上げました。今回の改革は、自分たちは国民のサーバントであるという意識を持った有為な人材に公務の世界に入っていただくための改革であり、そして彼らが政治と協調しながら、この国をマネジメントしやすい環境を整備していくための改革でなければならない、そういう意味です。

政策は政治主導で決定すべき、その立案には官僚の力が不可欠。

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草野:不祥事や天下りの問題を別にすれば、現在の日本の官僚はけっこう有能ではないかと思うんですね。国際比較が可能かどうかはわかりませんが、幹部になられる方は総じて優秀だと私は思っています。大臣から見た評価はどうですか?

石原:総じていうならば、確かに日本の官僚は優秀で勤勉ですし、不祥事を起こすのはごく一部だと私も思います。しかし、I種試験で入った人が全員優秀かといえば、必ずしもそうではない。これは企業や大学、どんな社会でもいえることですが。

草野:縄張り意識というか、自分たちの既得権益を守るという傾向が強いようにも思います。

石原:本能的にね。

草野:本能的に。それは感じられる?

石原:感じますね。省益あって国盛なしといいますが、さらに局益があり、課の益もある。やはり縦割り社会ですから、自分の組織の利益を守ろうとする。規制緩和などがいい例ですが、だれがなんと言おうと自分たちの権益を奪われまいとする。そこで、より強く抵抗した人が優秀であるかのような誤った見方さえあります。もちろん哲学を持って規制改革に反対する人たちもいますが、縦割りの中では、その殻を打ち破る方向に行動のベクトルが進まないと、どうしても内向きになりやすいですね。

草野:改革は天下りの是正や不祥事解消のほうを優先させているようですが、今おっしゃったことも非常に重要な点だと思います。たとえば国家戦略スタッフの創設がありますね。石原 日本の官僚が優秀といっても、大局的にものごとを見ることができる人は、そんなに多くありません。ですから縦割りの組織を越えて、省益にとらわれず、国益を第一に考えられるシステムが必要です。採用試験も今はI・II・III種に分かれていますが、・種でなくても優秀な方はたくさんおられます。ただ、今は昇進でもI種と大きな差があるわけです。II種の人が局長になると、ニュースになるくらいですから。そういう仕組みは変えていかなければならない。一定の段階までは試験区分によるとしても、その後は関係なく、能力次第で幹部に登用される仕組みですね。そういうシステムの下で、本当に優秀な人をどんどん登用し、大局的にものごとを判断させることが必要なのです。

草野:政治家と公務員のあるべき関係について、現状はどうなのか、また法改正でどのような効果が期待できますか。

石原:政治家と官僚の接触をよくないとする見方があります。確かに続発する不祥事を見ると、政と官の不健全な関係は断ち切らなければなりません。政治家は国民を代表し、立法府の一員として、よりよい政策を作る。官僚は行政府の一員として、誇りを持って自説を主張する。このような政と官が対等に論争する関係が大切だと思います。低成長で財源が限られている現在、あれもこれもというわけにはいきません。国が今、何をすべきで、何ができないか。そういった国民にとって痛みを伴う選択は、国民の付託を受けた政治家がすべきです。だからこそ、政策は政治主導で決められるべきであり、同時にそうした微妙な政策を立案するには、官僚のカが不可欠です。政治の決断力と官僚の専門知識を組み合わせた新しい制度を、永田町に、そして霞ヶ関に構築すること、それが求められているのです。

法制化に伴う課題に対しては、説明・協議を続けていきたい。

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草野:法制化等、改革の進展が当初の予定よりも遅れているような気がします。

石原:一つの大きな要因として、ILOの勧告(※1)があると思います。いわゆる労働基本権制約の問題ですが、各国にはそれぞれの歴史的背景や制度を組み立てたときの状況があります。日本の場合は公務員のスト権や団体交渉権を制約し、その代償機関として人事院を設けているわけです。まだILOの正式な結論は出ていませんが、日本政府の見解を提出し、ILO側に理解を求めるべく十分な説明を行っていく予定です。もう一つ、能力等級の具体化が難航しています。能力の評価基準を定め、それに基づいて評価していく。口で言うのは簡単なんですね。方向としても正しいと思いますが、人が人の能力を評価することは難しい。公務員にとっては、評価する側も、される側も初めての経験です。ですから、制度ができたら「トライ・アンド・エラー」の精神で試行を繰り返し、悪いところは手直しし、よりよい制度にしていくという勇気も必要だと思います。

草野:法改正作業への影響もさることながら、ILO勧告により「公務員制度改革大綱」に変更が加えられる可能性もあるわけですか?

石原:ILOでどんな最終結論が出されるのか、また日本政府の見解がどう理解されるのか。それと現場の組合の方々と、さらに協議を重ねる必要もあり、その中で制度改革を一緒にやっていこうという道が見つかるのか。大臣室の扉は、いつも開いていると言っているのですが…。

公務員は国民のサーバントであることを忘れてはいけない

草野:改革に向けて、大臣の意気込みをお聞かせください

石原:公務員制度改革を担当させていただく中で非常に厳しいご意見・ご指摘もいただきます。それだけ、人が働くうえで権利というのは重要で、その人の生活がかかっているんですね。しかし一方で、国家公務員であるなら国民に尽くすこと、自分たちは国民のサーバントであるという意識が不可欠です。

草野:地方自治体では実際に進んでいることですが、たとえば日曜日に窓口を開けるとか、そうしたサービスの提供が公務員の側から自主的に起こってこないのは、とても不思議な感じがします。

石原:そうですね。千葉県松戸市の「すぐやる課」などの例もあり、いくら障害があっても、やろうと思えばできるわけです。そういうサービス精神は、公務員の世界にはまだ足りないと思います。自分たちの生活を守るというメンタリティだけでは非常にアンバランスです。民間が厳しい状況にある中で、役所はつぶれないんだと。その点をしっかりと自覚して仕事に精励してもらいたい。そのためにも、やる気を持って働ける環境をつくり、また国民の信頼を取り戻すべく制度を改革していかなければならない。国際機関や組合の方々とも十分に論議を尽くし、新しい時代に合った公務員制度をつくっていきたいと思います。「夷険一節」(※2)の精神で取り組んでいきます。

草野:最後に、公務員をめざす若い人たちにメッセージをお願いできますか。

石原:ビラミッド型の年功序列の組織の中では、頑張って新しいことにチャレンジする人よりも、何もしない=失敗しない、という人のほうが出世しやすいかもしれません。しかし、それでは世の中の変化に対応した大胆な発想や決断が行われにくくなります。硬直化した組識に風穴を開け、頑張った人が報われる仕組みを作ること、それが今回の公務員制度改革の目的の一つです。思い切ってリスクをとり、チャレンジして成果を上げれば、それが正当に評価される。そういうダイナミズムが、公務員の世界に限らず、最近の日本の社会に欠けている気がしてなりません。若い皆さんには、新しい公務員像を一緒につくっていくためにも、日本をもう一度蘇らせるためにも、ぜひ公務員の世界にチャレンジしていただきたいと思います。

※1)ILOの勧告
平成14年11月、ILO(国際労働機関)が現行の日本の公務員制度は「結社の自由」の原則に反しており、今回の制度改革を機として原則に適合させるようにとの中間報告を出した。公務員に対し、制約されている労働三権(団結権・団体交渉権・ストライキ権)を認めるよう求めている。
※2)「夷険一節(いけんいっせつ)」
中国・宋時代の欧陽永叔の「昼綿堂記(ちゅうきんどうき)」の中の一節。平らな道でも険しい道でも変わることなく職責を全うしていかなければならないという意。石原大臣はこの言葉を平成15年のキャッチフレーズとして、大判の新年用名刺に記している。
草野 厚(くさのあつし)
1947年東京生まれ。72年慶應義塾大学法学部卒業後、上智大学大学院外国語学研究科修士課程、東京大学大学院社会学研究科博士課程を修了。東京工業大学助教授を経て、91年より慶應義塾大学総合政策学部教授。主著に、『日本の論争』(東洋経済新報社)、『テレビ報道の正しい見方』(PHP新書)、『官僚組織の病理学』(ちくま新書)、『癒しの楽器パイプオルガンと政治』(支春新書)、『公務員試験 わかる現代政治学ゼミ』(実務教育出版)などがある。

○インタビューを終えて

公務員制度改革を行おうとする大臣の側近も公務員。天下りなど国民の不満などが改革の前提にあるだけに、次回は人払いをして、石原大臣に本音を聞きたいと思った。もう少し時間が取れればというのが、正直なところだ。

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