マスコミ語録

メディアに掲載された石原伸晃関連記事を以下よりご覧頂けます。

師弟対談

特殊法人に挑む
「行革」斬り込み隊長の決意

正論 十月号

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<行革担当相  石原伸晃>  <千葉商科大学学長 加藤 寛>

石原:中曽根康弘先生に激励文をいただきました。「特殊法人が秋の戦場の戦端であり、斬り込み隊長として砲火を浴びよ。政局の焦点を作れ」という書き出しです。父親(石原慎太郎氏)が知事になったときも激励文をいただいたそうです。私はオリジナルでなくコピーでいただいた。大事にしま っておいたら、「君のお父さんは、ちゃんとそれを知事室に飾ってあったぞ」 というから、「先生、額装にするんだったら現物をいただかないと」といったら、「じゃあ」といってこれをくださった。

加藤:(額を手にとり)立派な字だな。へえー。

石原:そして土光氏(敏夫・第二次臨時行政調査会会長)のような大物を、後ろだてとして立てろとおっしゃった。

加藤:自分のことをいってるんじゃない?(笑い)。

石原:それで言ったんですよ。「じゃあ、中曽根先生の考える大物はどなたですか」「うん、大物がいない世の中になった」。だからやっぱり(笑い)。

加藤:私ね、石原さんが大臣になられたとき、期待はしてたんだけど、ものすごい、期待以上ですね。

石原:ありがとうございます。

●特殊法人への切り口は事業類型ごと

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加藤:行革断行評議会には、いいメンバーをそろえた。あれが本当に力になって、そしてどんどん特殊法人に切り込んでいるでしょう。よくあそこまでやってこられた。八月十日に論点が出ましたね。こちらの考えている方針はこうだ、それに対して役所側からの反論が列挙されている。あれを見ながら思ったんですが、私たちが土光臨調のときに、特殊法人についていろいろ切り込んだんです。
結局、成功したのと失敗したのとあるんですが、失敗した方は例えば電電公社で、国鉄は成功したんです。電電公社はなぜ失敗したかというと、あれは電電公社の人たちがNTTに変わって民営化したとしても絶対分割はしたくない。私たちも民営化してくれれば分割までいかなくてもいいかなと、思ったんです。ところが実際は、分割をしないと組織は絶対崩れない。私はそういう意味で分割するということは非常に重要な手段だということをその頃分かった。これができなかったためにNTTは失敗して、そしていまでもNTTは接続料金が高いでしょう。いま一生懸命下げてるけども、しかし、無理に下げてますからね。かって私たちの頃には二万人ぐらい離職者が出ればいいといった。いまはもう十万人ですから、これはNTTの人たちの責任は大きいと思うんですよ。また、私たちが詰めを甘く見ちゃったこと、これがいけなかった。
国鉄の場合は、詰めのときに、国鉄再建監理委員会を作って、絶対分割しなきゃだめというふうにいったからこれは成功したんです。これから特殊法人に切り込むのに、いろいろ経験してる人がたくさんいるからやれると思いますが、反論を見ていると、いってることは同じなんですよ。われわれは公益のためにやってると。あの反論をごらんになってどう思いますか。

石原 この反論は全部検証しなきゃいけない。ただ、いま先生がおっしゃられたように、彼らは必要だからあるといい、こっちは、もうそろそろ仕事の役割を終わったんじゃないですかという。結局平行線なんです。だから、どちらが正しいかという哲学論争はやめて、お互いの意見をメディアを通じて明らかにして、国民の皆さん方にどちらがいってる方が正しいのかということを決めていただく。そういう方法でやっていくしかないです。先日も、ある方から電話がかかってきました。「現場を見もせずに役人が紙の上だけで非効率だというのは本当に不愉快だ」とかいって(笑い)。だから、「いや、お怒りちは分かりますけれども、こちらは行政改革ですから、どうしても効率性が最重要になってしまうんです。政策的に意義があったことを否定しているわけじゃありません。八月十日には役所の反論も併わせて公にさせていただきましたので、それを国民の皆さん方がどう判断されるかだと思います」と申し上げました。

加藤:そうですか。今度の特殊法人の扱い方では、産業分類別に挙げていく場合と、例えば政策金融なんていうのは別にして扱うなど、いろいろ手があると思うんですが、この切り込み方はどこから進めていくお考えですか。

石原:事業類型ごとです。公共事業をやってるとか、政策金融とか、宿泊施設とか、研究開発とか、そういう事業類型ごとに分類してゼロベースで見直します。
ここに私に対する批判も一番あるところなんです。というのは、個別の法人名が出てこないですからね。私も実は、一九九五年に政策金融の統廃合をさせていただきました。そのときの経験から言うと、事業の量を絞らないでくっつけると大きいものができて、総裁のポストが一個減るだけで、しかも、思ったところとくっつかない。ですから、今度はすべての事業をゼロから見直して、行政がやる仕事をどうやって減らすかというところに焦点を置かなきゃいけないんじゃないかというのが発想のポイントなんです。

加藤:本当にそうなんですよ。法人別に行きますと必ず合併論になって、自分の組織を直そうという考えはないんです。前のくだらん例ですけれど、日本は絹を非常に重要視して、蚕糸事業団がありました。その蚕糸事業団を廃止しようと思って、私は蚕糸事業団の廃止を唱えた。そうしたら毎晩のように役人が来て説明する。「先生、これは絶対に重要です」「なんで重要なんですか」。結局、聞いてみると、「天照大神以来日本の絹を使ってたのになんでそれがいけない」、こういうんですよ。「でも、あれは中国の絹だったんじゃないですか」といったら、「中国であろうと日本であろうと絹は絹だ」というんですね。絶対反対だという。私もへえーと思っていたんですが、そしたら一週間ぐらい来たと思ったら、次に来なくなっちゃった。変だなと思ったら、「先生、もう私職場が変わりましたからあれは結構です」なんてね。それですぐ潰したんですけどね(笑い)。
これもまた変な話なんですけれど、文部省が最後まで抵抗するものだから、文部省の中の少なくとも特殊法人二つを一つにしてくれと、いったんです。それで何を持ってきたと思ったら、学校給食会と神宮の国立競技場をくっつけた。私は「これどういう関係あるんだ」といったら、「国立競技場を走り回るとおなかがすくから必要だ」(笑い)。しかしいまになってみると、学校給食会と国立競技場一緒になっちゃったけれども、これはもう人数からいったってすごいでしょう。学校給食会の給食のための費用というのは地方の財政をものすごく悪化させてますよね。給与が高いし、辞めるとき退職金をもらえるでしょう。だからみんな学校給食会の職員たちはかなり豊かな方がおられるようです。それが地方行政を圧迫して、地方交付税を増やしちゃってるということが起こってるわけです。
私は効率の問題じゃないと思うんです。「実をいうと、効率よりも公共のために」と、こういうから、それは違うと。公共でも効率でもいいから、とにかく政府が何かやるということがよくない。これをまずやめて、政府がやるべきことはこれしかないんだというところまで行かなきゃだめです、というふうになってきたと思うんです。
そこまで進めたのはよかったと思うんですが、簡保の民営化、あれ、なくなると思ったらなくならないんですって。

石原:ええ、今度の反論書でも、簡保の宿は契約者のための施設だから引き続いて営業していくといってます。年金基金は、員内利用のための施設の方はやめなきゃいけないなと言っています。ただし地域事情も考慮して、とちゃんと前文が入ってましたが。

加藤:そうすると、やめませんね。しかしどこかで切るおつもりですか。

●民間に任せられることは民間に

石原:ええ。先生が引用された蚕糸事業団ですが、これは先生が潰してくれたお陰で、昔は試験場だったところが区民の皆さんの憩いの場所になってます。学校給食の方ももうそろそろ民間に任せればいいじゃないかと、私たちはいってるんですが、段階的に縮小していくことは考えるけれども、まだその時期じゃないみたいなことをいわれています。

加藤:民間に委託するということをどんどんやっていけば政府のやる仕事って減っていくんです。

石原:先程先生がおっしゃられたように、日本国中に網の目のように行政が行っている仕事があります。国民の皆さん方も、ある程度、「あ、お上がやってくれるからよろしくお願いします」みたいな部分も実はあります。
例えば、今度商工中金の民営化が報道されると、「それは困る」と言う人がいる。理由を聞くと、業績が悪化してくると、メーンのバンクは助けてくれるけれど、二番、三番の銀行の融資は減らされてしまう。その分を公的金融にお願いしているから、公的金融が民営化されたら困るんだというんです。
でも冷静になって考えてみると、公、パブリックサービスが出ていくのはセーフティネットとして最後のところであるべきです。それなのに、先程の簡保の宿にしても(年金資金運用基金による)グリーンピアにしたって、民間のホテル、旅館があるのに政府や地方が同じ仕事をしている。それは本当は正常な状態じゃないんだということをもう少し皆さんに理解してもらいたい。そういう国民の皆さん方の理解なくしては、行革は成功しません。

加藤:いまうかがってて、小泉さんの考えてることとぴったり一致してるなと思いました。政府がやらなきゃいかんこともあるけれども、民間でやれることは民間がやった方がいいという、そういう発想が流れてますでしょう。

石原:小泉(純一郎)総理はシンプルで分かりやすいですね。痩せ我慢の一字ですよ。民間に任せられることは民間に、地方にゆだねられることは地方にという大原則を絶対に崩さない。この間も官邸に呼ばれて、「特殊法人は全部だめだ。原則としては廃止、民営化のこの二つしかない」と、われわれに指示されました。そこには一つの哲学が脈々と流れています。

●小泉首相は強気の人

加藤:経済財政・IT担当大臣の竹中(平蔵)さんに聞いたら、竹中さんが道路財源の見直しをいうかという話になったときに、竹中さんがまだ早いなと思っていたんですって。だけど答弁するところへ行ったら、そばにいた小泉さんが、足でこうやって(突っついて)、「言え、言え」というんですってね(笑い)。だから竹中さんは、これはしょうがないなと思って言っちゃったという。やはり相当強気だなと思っていましたけどね。私はその強気なところを見ていて、小泉総理が学生の頃、私はゼミの学生とは親しくしてるけど、一般の学生はなかなかそう簡単にしゃべるってことはないんですが、彼のことは覚えてるんです。質問しに来るんですよ。普通は、あまり聞きに来るということはないんです。
それは一人で来るんですね。平気でね。それでなかなかいいことを聞くんですよ。聞いてて、これは面白い男だなと思っていた。ある先生に聞いたら、いや、彼はね、(試験で)ヤマかけるの、好きなんですよ。当たるといいけど、当たらないとだめなんです(笑い)。いわれてみると、いま心配になってきたのはね(笑い)、改革っていってるけど、ヤマかけるんじゃないか(笑い)。そしたらどっかで落っこっちゃうんじゃないかって心配なんです。そういう感じはどうですか。

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石原:私はこの秋、景況感がどうであるかということが一つポイントだと思います。臨時国会がいつ始まるか、QE(国民経済計算速報)も出ます。景況感が悪くなれば、景気対策を先行させろという声が必ず出てくる。改革に伴う痛みをやわらげろという声です。しかし、行政改革、とくに特殊法人改革は痛くないんです。無駄を切って、そこで浮いてきたものは本当は国民の皆さん方の財産ですから、それを有効に配分し直せばいい。私は特殊法人改革というのは、小泉構造改革の光の部分だと思っています。
それと、この間総理に呼ばれたとき、総理が平成十四年度予算で一兆円削減を目指せと。もうひっくり返りそうになりました(笑い)。私は、三年ぐらいで一兆円削っていくのが実現可能なギリギリの線だと思っていたので、目がシロクロして、一緒に行った事務局も倒れそうになって、これはやはり塩川(正十郎財務相)さんに大ナタを振るってもらわないと。行革事務局が予算を査定できれば、そのぐらいのお金は出ますが、行革事務局にはその権限はない。改革に反対してる人たちが予算要望してきたとき、それを塩川さんが、「無駄や」。バサッ。「こんなもの要らへん」ってやってくれないと、ボリュームを稼ぐことができない。
やはり国民の皆さん方が見てるのは、初めの一歩がどのくらいかな、でしょう。簡単に一兆円削減するというわけにはいかないと思いますが、やはりそこに強い総理の意志が働くのか、働かないのか。誰がそれに反対するのか。これが浮き彫りになることが実はポイントだと思うんですね。

●問題になるのは道路特定財源

加藤:さてそうしますと、いま一番問題になるのは道路財源だと思うんですよ。私は特殊法人という問題をなぜやるのか。郵政の三事業改革をなぜやるのかがやっと国民に分かってきたところだと思うんです。世論調査で見ると賛成者は大体五〇%超しました。ということは前は三〇%ぐらいだったんですから随分賛成者が増えてきた。私はよかったと思っているんです。これはしかし、理屈が分からないと分かりにくいことなんですね。ただ郵政事業をやめるんだというと、郵便局がなくなっちゃうという発想になるでしょう。
大切なのは、日本の構造改革。構造改革ってなんだというと、すぐ財政再建という人がいるんですよ。私は財政再建というのは単なる結果なんだ、なるか、ならないかは、これはやったことによって結果が出るのであって、財政再建が目標じゃないんだということを言い続けてる。
構造改革の重要なことは、それは日本が明治以来やってきたやり方、それは何かというと、金融の面においては間接金融、これが絶対だった。その間接金融が行き詰まって、いま金融世界が大きく崩れたんです。そういう間接金融を直接金融に変えること、これがポイントです。
間接金融を支えてきたのが郵便貯金であり、特殊法人なんです。特殊法人を使って、公的部門でいうと金融の半分を占めてますから、民間の不良債権を処理するとしても、これを直さない限りはだめなんです。公的部門の不良債権が大体百五十兆円ありますからね。これを片付けなければだめなんだ。そうすると、これは特殊法人を潰さない限りは絶対解決しないということがだんだん分かってきてる。
しかも特殊法人をここで直していこうとすると、いきなり直そうと思っても郵便貯金があるから、これを郵政公社に移す。郵政公社に移したら、郵政公社がそこでもってお金を地方にそれぞれ集めたところに分割してしまう。これを一本にしちゃ絶対だめなんです。分割しまして、地方ごとにそのお金をうまく融資するんです。そうすると地方交付税を減らしていっても今度は地方はそれに耐えられるようになる。そこで地方交付税が減らせるようになる。そのために一つの段階として、使うお金をもっと節約しよう、ということになって、一番目立つのが社会保障。なかなか減らせない。それでも増加分を減らしましたね。予算で二番目に大きいのが公共事業。その公共事業のなかでもとくに目立つのが道路です。
そのなかでも道路に関する特殊法人の首都高速、阪神高速、日本道路公団、本四架橋、この四事業にまずメスを入れなきゃいけません。本四架橋の方は補修事業をやめるわけにいかないから、やめたら困る。しかし大分ルートと和歌山ルートは、もう造ったらだめです。そして阪神高速と首都高速は独立させちゃう。民営化しちゃった方がいいですね。
それから日本道路公団は新規着工凍結・中止と思っていたら新聞にちゃんと出ましたね、分割・民営化がいいと。やっぱりいいとこ衝いているなと思って。

石原:いやあ、これはたたかれまくってます。「もともと採算なんて合うわけないだろう。だから税金を入れているんだ」と叱ってくる方までいらっしゃいますし、六兆円からの道路特定財源があって、今度の参議院選挙で私も地方に行ってみてよくわかったんですが、やっぱり道路なんですね、地元の人が望むのが。

加藤:それは地元が望むというより、道路をつくるとお金は一般交付税でもらえるんですよ。だから、みんなつくっちゃう。道路だったらもらえる。しかし道路でなきゃだめなんです。ただ、その道路も、県によっては県知事さんが自分のところの力でやってるところあるんですよ。国道の基準には達しないけれども、しかし実際には道路としてちゃんと立派になってるんです。これができちゃう。
それがはっきりしているのが鳥取県と島根県です。鳥取は道路が立派、島根は道路はよくないんです。なぜかというと古い道路を一生懸命補修しながらやってるからそうなっちゃう。鳥取はお金がないからバイパスをつくっちゃったら、 「これは速く走れる」なんていってるわけでしょう。

石原:私はね、参議院で回って道路の要求が多いというのが分かった。そこであえていったんですよ。「もう有料道路はやめましょうよ。皆さん方だって高いお金を払って有料道路に乗るのは、いやでしょう。もし町と町をつなぐのに必要だったら税金でバイパスをつくればいいじゃないですか」といったら、意外にそれが受けるんです。やっぱり高速道路料金が高いというのには田舎の人も怒ってるんですね。

加藤:そうです。地元の要求でつくってるんじゃないんです、あれは。日本道路公団というのが審議会を作って学識者を集めて、日本の道路を、自分で走ったこともないような人が集まって、そして自動車の運転もできない人が多いんですよ、あれは(笑い)。それでここにつくれ、あそこにつくれとやってるわけですよ。だから全然使いようがない。

石原:あと、地方を歩いてて驚いたんですが、広域農道はすごいですね、便利で。移動中に車が、途中で国道からパッと横道に入ったんです。どこへ行くのかと思ったら「広域農道」ってあって、信号がないから時速八〇キロでパーッと行けるんですよ。こんなものが至るところにある。

加藤:そうです。だから地方の財源の使い方を見ても、農業に関するところだけは減らないで、増えるというか、横ばいなんです。農業はどんどん減ってるのに増えてる。

石原:専業で一生懸命やってる農家は二十万戸ぐらいしかなくて、そこの人たちだけにお金を融資するための特殊法人まである。そういう一生懸命やっている農家の人たちは決して現状に満足しているわけじゃなくてもっと革新的です。

加藤:そう。農道空港やめたからよかったけどね(笑い)。

石原:本四架橋は儲かってませんから別ですけれども、道路公団、首都高速、阪神高速は事業収入が二兆円を上回っていますので、これは事業性が高い。もう一つポイントは、国土交通省も道路をつくるノウハウを道路局で持ち、道路公団がまた別の組織として持っている。道路をつくる組織がそんなにいくつも必要なのか。とにかく利用者が乗りたくない道路をつくるのはやめた方がいいと思います。本当に必要なら国道としてつくればいいし、無駄な道路をつくるお金があるなら、そのお金で既存の有料道路の値段を下げればいい。そうするとみんな拍手してくれるんです。

加藤:そうそう。だから国民は、住民は分かるようになっているんです。分かってないのは知事さんと地方議員。この人たちが、とくに地方議員は全国三分の一は建設業者なんですから、みんな自分の仕事がなくなると思って心配してるんです。そこで道路問題が一つ争点になりますね。
その次にさっきお話ししたハコモノが問題になるでしょう。その次は何ですかね。

●セクショナリズムの弊害

石原:研究開発の分野でのセクショナリズムがすごい。私はロケットの三機関は一つでもいいんじゃないかと思いますが、話を聞くとやっぱりバラバラがいいんだと言っていた。文部省と科学技術庁が一緒になった、つまり親が一緒になったのに子供たちは別々独立してるというのは不思議ですね。そう思って三機関の業務の統合について指摘をしましたが、文部科学省ではこれを受けて三機関の統合に向けた準備会議を設置することになりました。

加藤:もう一つ科学技術に関係あるんだけれど、みんな教育費を減らしちゃいけないという先入観があるんですよ。例えば科学研究費として日本学術振興会を通して配るんです。これがはっきりした基準がないんです。ある有名な先生が入ってるから、その先生が一言いうと入れて上げるとかいうふうになってる。これはもう全く政治の世界と変わらないんです。だから総額を減らしたってべつに影響が出るわけじゃないんです。科学技術研究費が減ったら日本の科学技術がだめになるなんてこと全然ないですよ。
しかもいま慶大湘南藤沢キャンパスとかには、業界からどんどん金が来るんです。みんな役に立つのに使うのはいいというわけですね。ところが課税問題が時代にあいません。

石原:産官学の提携ですね。

加藤:ええ。コンソーシアム(提携)がいままでは国立大学では認められてなかったんです。そのためにお金が集まらなかったんですが、今度はコンソーシアムができましたから、やれるようになった。だから国立・私学を問わずどんどんお金を集めて、地方に役立つ仕事をするとかいうことで非課税にすればいいと思うんです。

石原:国立大学は旧帝大の七大学はやる気はあるんですね。困ってるのは地方都市にある旧二期校ですか。

加藤:それも実は誤解なんですよ。地方の大学が動けないのは文部省の天下り役人が事務局員だからなんです。全国で二千人ぐらいいます。

石原:大学の職員にですか。

加藤:ええ。文部省から出向してる。その人たちがいつも学長を監視してるんです。学長がなんか変なこというと、すぐ「それはまずいです」といってね。だから広中(平祐・山口大学学長)さんなんかしょっちゅういってますよ。「私はちょっと激しいこといってね、あ、また問題になるかな」なんていって心配してるんです。そういう調子なんです。国立大学が独立法人になるんだから、事務局員は全部文部省から切った方がいいです。

石原:同じようなことが東京都でもあります。東京都の都立病院、これは保健局とかから来るんです。二年間ぐらい。病院長がかなり思い切ったことをやりたがるんだけど、「そんなことやったらだめですよ」といって、これまでのことを踏襲するから雪だるまになって赤字が増える。

加藤:おっしゃる通りなんです。私は教育予算だから削ってはいかんということはないと思う。もっと余裕が出たらやるから、少なくとも一年間はこの部分だけは削ってくれということをいえば、それはみなやると思うんですよ。

石原:ところが、結局セクショナリズムですね、中央省庁というものは。一度取った予算が減ると、その担当者は無能な課長、無能な係長というふうになる。それは予算の単年度主義の抱える矛盾で、一度ふくらました縄張りは絶対守ろうとする。この日本のシステムが一番がんのもとですね。

加藤:がんです。そこはしかし三重県の北川(正恭知事)さんがやってるんですよ。あれはうまいと思ってるんですがね、とにかく予算を減らしたものに対しては報奨金をやる。それが自由に使っていいとかいうふうになってるでしょう。

石原:国もそうしなければだめですね。

加藤:私はそうなると思います。

●石原都知事は即戦実行型

石原:先程加藤先生が指摘された郵便貯金、これが日本の間接金融市場を育てたんですよね。

加藤:そうなんです。

石原:いつの間にやら二百五十兆円のボリュームになって、一九八九年までは限度額三百万までだったのが、いま一千万円までなっています。これからは直接金融、すなわち企業が自分でマーケットからお金を調達する時代です。そのためにはマーケットを育てなければいけない。そのポイントは、個人投資家をいかにマーケットに呼び込むかです。なのに政策的にはまるで逆のことをしている。投資を優遇しなきゃいけないのに、まだ貯蓄優遇なんです。私は、郵便局は全国にある金融機関として、それなりの機能を持ってると思うんですが、マクロでみると、二百五十兆円の金をこれから自主運用しろといったって、運用なんかできないですよ。スッちゃったら税金で穴を埋めるしかないわけだから、全部戻ってきたといったって、全然問題の解決になりません。

加藤:地域に分割すると、地方銀行に融通するようになります。その郵便局が例えばいくつかの道州制かなんかの単位に分かれますでしょう。そこに日本銀行ができると同じなんです。そうすると、そこに新しい一つの通貨圏ができあがる。これでもってやっていきますと、中央では仕事がないといいながら地方ではやりたい仕事はいっぱいあるんです。そのやりたい仕事にそのお金が使える。そして足りないところは地域通貨で補えばいいんです。
地域通貨を、いま日本でも二百ありますけれど、これをどんどん使ったらいい。私は都知事にも申し上げて「地域通貨をおやりなさい」「どんなのだ」というから、「例えば銀行税を取るなんて、あれは間違いですよ。あれはいけません。外形標準課税といってるけれど、あれは外見標準課税。外形じゃないですよ」(笑い)。そうしたら、「そうかな」というんで、「あれは懲罰税みたいなものだから、あれをやるくらいだったら、そのお金は地域通貨でやったっていいんです。地域通貨でやって、例えば福祉のためのお金とか、あるいはその他、環境団体に使いにくいお金がありますから、そういうところで手当てしていけばいいんです。そうすれば東京都のお金も融通はきくし、地方が赤字になってるけども、それはみんな助かっちゃうんですよ。そういうことを考えた方がいいですよ」って申し上げたことがあるんです。

石原:一回なんかしゃべってましたけど。加藤先生が知恵付けたんですね。

加藤:ハハハ、出ちゃった。お父さん、偉いんですよ。というのは、私が「国立大学だって売っちゃったっていい」といったんですよ。「国立大学は売れないだろう」、こういうからね、「いや、あれは分割すればいいんです。例えば東京大学全部を売るわけにいかないけど、研究室ごとに売ったらいいじゃないですか」。そうすると千葉商科大がすぐ買いに来るんです(笑い)。研究室が名前だけは千葉商科大に移っちゃった。受験生が迷っちゃうわけですよ。おれ、東大に行こうと思ったら千葉商科大に行っちゃったか(笑い)。受験生がこっちに増えてくれればいいよなんてね。

石原:大学も競争の時代ですね。

加藤:そうそう。三四郎池だって売っちゃえばいいんですよ。あの三四郎池の周りに有名レストランを並べて、そして通行料を取る。そうしたら通行料で東大の赤門の中ぐらいは費用まかなえますからね。そういうことを考えなきゃいかん。そうしたら都知事がすぐ、「そうか、それじゃ都立大学もやるか」といって、都立大学にメスを入れたでしょう。偉いと思ってる。ああいうふうに即戦実行という方向に行けばみんなびっくりしてるうちにどんどん進んでいっちゃうんです。

石原:いやもうせっかちなんです、父は。今度二年連続ベア・ゼロという人事院の勧告がありましたね。そうしたらだめだ、なまぬるいと。あんなものは給与をカットしなかったら東京都がもたないじゃないか。どうも、自分がやってることとこの行革をくっつけようとしてるきらいがある。

加藤:実は銀行税のとき、都知事が「銀行はこんな公的資金まで導入しながら給与だけは高い」というんですよ。だから私はすぐ調べて持っていった。それはね、東京都の職員と平均給与は変わらなかったんです(笑い)。そしたらね、 「そうか、こっちも削らなきゃいかん」といってましたけれど、それをまたパッといって実行させようとする。それはいいと思うんですよ。
それから東京都の税制調査会ってあるんです。この間東京都の人が来て私に税制調査会の会長になってくれというんです。大蔵省に相談したら、大蔵省が「それはやめてください」(笑い)。

石原:国の会長をやった人だからですか。

加藤:国のいろんな欠点を知ってるから、そこを突っ込まれちゃ困るんでしょう。それでだめだという。

石原:次が出そうですか。

加藤:うん、私はうまく行くといいと思ってますけどね。国の方はそんなこと考えてないから、地方がそれやったら国はびっくりしちゃって、慌てますよ。それから石原都知事が最近やったのでよかったのが保育園。認可法人じゃなくて認証にしちゃった。あれはいいです。

石原:この間、保育園を一つ見てきました。全国で唯一の公設民営。三鷹市に一か所だけあるんです。当時の自治省、厚生省は、「もし民間に任せて事故があったらどうするんだ」と反対した。公がやっても社会福祉法人がやっても事故はあると思いますが。そしたら市長さんが「責任は全部自分が取る」といって、やっと認められたそうです。市が自分でつくって自分で運営すると、六十人の保育園で年間二億二千万円、運営費がかかる。それを社会福祉法人に任せたら一億四千万円。今度入札をして民間に任せたら九千万円だそうです。「保育みたいな神聖な仕事を株式会社がやるのはけしからんし、神聖な仕事がなおざりになって、子供たちが困る」と言う人もいた。しかし、結果は全然違って、公設のときとの違いは、賃金を安くするために保母さんの年齢が若くなったくらいで、かえってサービスはきめ細かくなった。アレルギー用の食事も作るし、イスラムの子供には肉の入ってない食事も作る。そこまで徹底してる。なかなか大したものです。

加藤:これからは年とった人が働いても給料はあまり要らないんです。給料なんか要らないという人もいっぱいいますからね。

石原:首長はいいですね、権限を持ってますから。国はある意味での民主主義が行き届いてますから、ものを一つ決めるのにも、一定の手順を踏まなければならない。さまざまなグループの声を聞かなきゃいけない。そして議論をしなきゃいけない。議論するには時間がかかる。だからものごとの決定があとへあとへ送られてくるきらいがありますね。

加藤:これからおそらくいまおっしゃったように、小泉自民党は圧勝したけれども、しかし反対してる人も随分当選しました。この人たちがいろいろ文句いってくると思うんですよ。議論しますと、絶対これは両方とも理屈があって、あとに引かない。答えが出ないんです。だけど面白いんですけれど、非常に良心的な役人は多いんです。口では反対してるんですが、腹の中では「それは確かにそうだ」と思ってるんです。そう思ってる頃合いがありますから、それを見て、あとは「じゃ、もうこれで行きましょう」と決めちゃう。そうするということ聞いてくれるんです。

石原:日本の官僚のすばらしいところです。それが意外に見られてない。

●強化された総理、担当大臣の権限

加藤:私はこれは石原さんにお願いしたいんですが、いま総理は、もめたときに、必ずしも閣内が一致しなくても、多少一人二人反対があっても総意としてやってもいいということが多数決で大体方向が出たら、総理が「やる」といって、やっちゃっていいんです。内閣法で改正になったんです。

石原:改正になったんですね。

加藤:やっていいわけです。実は政府税制調査会というのは総理の諮問機関なんです。だから、みんな集まらなくて答えが出なかったなら、総理は政府税調の答えを待たずに決断していいんです。それなのに小泉さんのいうのを聞いてると、政府税調のいうことを聞いてあげようというような雰囲気になっているでしょう。私は一度政府税調の頭をパシッとたたいた方がいいと思う。「あんた方は総理の諮問機関なんだから、自分たちが通らなかったら絶対成立しないよといったそういう驕った気持ちをやめなさい」。そうすると、自民党税調も少しおとなしくなる(笑い)。

石原:総合規制改革会議も総理の諮問機関で、私が担当大臣ですが、先月中間とりまとめを出そうとしたら、選挙期間中なので案を出すなという。出すと選挙にマイナスだというんです。私は、小泉改革には具体的なものがないという批判を野党の方があれだけいってましたから、「規制改革だけは具体的なものを、ぜひ宮内(義彦会長)さん出してください。総理の諮問機関なんだから、総理が出してくれといっている以上、出すのが役目ですよ」といったら、かなり短時間に充実した内容のものをまとめていただいた。

加藤:ええ。あれはよかったですね。

石原:こういうものも表に出したから評価されるんです。税もきっと同じ理屈で、「総理がこう思うんだからあなた方やってください」といって、だめだったら、「意見相ととのわず」で構わない。最後は総理が「両論あったけれども、こっちで行きます」というふうに決断する。
内閣府ができ、総理の権限が強まったことを、政治家も分かってないし、審議会の側も分かってないという過渡期特有の問題は、結構いろんなところで感じますね。

加藤:そう。だから今度石原大臣がおやりになるときに、特殊法人なんかでいろいろ議論が混迷するでしょう。そのときに石原大臣が一言おっしゃればいいんです。「あなた方の意見は分かった。しかしわれわれはこう考えてる。われわれの意見が絶対間違ってると思わない。したがってこの問題については閣議にかける」とおっしゃればいい。閣議にかけるには、いままでは次官会議を通さなければかからなかった。今度は通さなくていいんですから。閣議にかけて、そして小泉さんに「やれ」といっていただけば、それでもう、やれるわけです。是非頑張ってください。

石原:なるほど。いい手法を最後に伝授していただいきました。しかし、これはあんまり使わない方がいいかもしれません(笑い)。

【加藤 寛(千葉商科大学学長)】
大正15年岩手県生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業、同大学経済学部教授を経て同大学総合政策学部教授・学部長。現在は千葉商科大学学長など。この間、日本学術会議会員、政府税制調査会会長などを務める。著書は「『官』の発想が日本を亡ぼす」(実業之日本社)、「気概ある日本人 無気力な日本人」(PHP研究所)、「大増税の世紀」(小学館)など多数。

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