メディアに掲載された石原伸晃関連記事を以下よりご覧頂けます。

総点検 小泉政権
「革命的改革」
がいまはじまる
石原伸晃
行政改革担当大臣
緊急発言
私の特殊法人改革
「試案」
現代 8月号
法人が抱える借金は300兆円!
「痛み」の正体を克服できるか
非現実的な償還計画も
五十嵐:6月22日に特殊法人改革についての「中間とりまとめ」が発表になりました。採算がとれなかったり、用済みになった事業は廃止も含めて見直すということで、日本道路公団、本州四国連絡橋公団など77の特殊法人と86の認可法人が対象になる。公共事業関係だけでもかなりの大改革になると思いますが、すでに抵抗があるのではないですか。
石原:今の段階ではまだ非常にマイルドです(笑)。動きが出てくるのは9月ころかなと。
五十嵐:その動きとは、官僚や族議員の抵抗・反発でしょう。今は改革のスタート台に立ったという段階ですが、これからどんどん整理合理化計画がリアリティを持ってくるのですが、計画が具体化するにつれて反対勢力が姿を現してきますね。
石原:特殊法人の改革については、誰もがやるべきだと言いますよね。だが、いざ個別の事業の話になると、その事業を所管する役所の側から「われわれの事業には政策的意義があるし、借金だってちゃんと返せますから」と。そういう話がこちらの事務局のほうに、すでにきています。
五十嵐:族議員からの圧力は?
石原:それはまだです。いまは類型ごとの事業見直し、棚卸しをやっている段階で、棚卸しのあと、最終的に夏までかかって、「いや、役所の皆さんはそう言うけれども、これはどうも廃止のほうがいいんじやないですか」といった話になったときには、そうした人たちが猛烈に姿を変えて跋扈してくるのかなと……。そうした動きが9月以降に本格化すると思っています。
五十嵐:具体的にうかがっていきます。まず本州四国連絡道路事業ですが、この事業は有利子負債が3兆8000億円で、年間の利子だけで1400億円。明らかに倒産状態で、廃止になっても不思議ではない。道路公団も24兆円という借金があり、ピーク時には30数兆円にもなるといわれている。返済計画も出されているようですが、非現実的な“フィクション”という気がします。道路公団も有力な整理対象になるのではないかと思うのですが。
五十嵐:後ほど詳しく述べさせていただきますが、現段階では個別の特殊法人をどうするかという議論はしていません。それを始めると、個別法人の行く末にばかり関心が集まり、結局、数合わせの議論に終わってしまう危険があるからです。いま必要な改革とは、すべての法人とその事業をゼロから見直し、すべてのムダを排除するという改革なんです。
それを踏まえたうえで申し上げると、首都高速道路公団は交通量を前年に比べて1%未満の増、日本道路公団は1〜2%増、本四架橋になると3%強の増(笑)と予想している。つまり、危ないといわれているところはど、疑問の多い、五十嵐先生の言う“フィクション”に近い償還計画になっています。
そこで、9月に平成12年度末決算をもとにした行政コスト計算書を全法人に作成させます。特殊法人も子会社をたくさん持っていますから、民間企業のような連結ベースで見たらどうなるかというものを出させる。そのうえで中身を検討したら、その運営の実態がはっきり見えてくると思います。
債務処理にはファンドを考える
五十嵐:3兆8000億円もの借金を抱えた本四連絡橋の返済計画が、交通量を前年比3%増で見積もっているということ自体、返せないと自白したようなものです。当然、今後事業廃止という話が出てくるでしょうが、ただ公団を廃止しても、橋や道路といったモノは残る。それをどうするのか、という問題が生じますね。
五十嵐:橋を壊して鋼鉄の塊にしてもしょうがない(笑)。単に事業を廃止して税金で穴を埋めるのではなく、民間の知恵や手法を活用すればいいんです。民間企業の再生なら、民事再生法や会社更生法による債権カット以外にも、債務の株式化、資産の証券化、その間をつなぐDIPファイナンスなど、それこそありとあらゆる手段で企業を再建していく。特殊法人でも前例にとらわれず考えれば、やり方はいくらでもあると思います。
先日、ドイツのあるエコノミストと話をしたんです。そのエコノミストが「私は神戸も見た。四国も見た。四国は本当にカントリーサイドでいいじゃないか。あんな立派なものを建てたんだから、大阪圏の人の住宅は四国につくればいい。なぜそういうことをしないんだ」と言うんです。確かにおもしろい話で、橋の使い道はあるんですよ。
五十嵐:その場合、問題はそうした街づくりまで引き受ける民間会社があるかどうかですね。
石原:ぇえ。1社ではできないので、ファンドを考えるんですよ。だから僕はファンドをつくれ、ファンドをつくれとずっと主張している。
五十嵐:水資源開発公団はどうですか。橋はまだ有用性があるが、ダムはどんどん埋まっていって、最後には巨大産業廃棄物になる。これだけムダだと言われながら、国土交通省河川局や公団はそれを無視してつくり続けてきた。あとで「どうにもならなくなったから税金で負担してください」と言われたって、国民は絶対に納得しませんよ。
石原:ダムは今、国が計画でやっているもので260。これは相当な数ですね。私の友人で片山(善博)さんという鳥取県知事がいるんだけれど、彼の話で面白かったのは、240億円のダム開発をやめたんだそうです。それで、その予算を使って学校をつくるなどの事業をしたと。だから、「地方にとっては(ダム予算は)宝の山だ」と言ってました。議会も反対しなかったそうです。ダムも本当に必要か否かも含めて、真剣に考えていかねばならない問題ですね。
何が日本の金融を歪めるのか
五十嵐:特殊法人を民間の会計基準でチェックしていくと、300兆円を超える巨大赤字が浮上してくるのではないかと思います。いずれほとんどの特殊法人が整理縮小や廃止という分類処理がなされていくと思いますが、国民がいちばん知りたいのは、やはり膨大な借金の穴埋めの方法です。国鉄民営化による27兆円の負債は、結局、国民の税金で尻拭いすることになった。同じことが、特殊法人改革でも起こってくるのではないか。そうなった場合、よほどしっかりと情報開示をやって国民の納得を得ないと、小泉内閣だってノー・サンキューということになりかねません。
五十嵐:今は事業の必要性を18の類型に分類し、その事業に社会的存在意義があるのかないのか、あったとしてもムダがどれだけあるのか、ないのかといった論点から区切って検討して、全体に網をかけた段階です。具体的にどう処理していくかは、これからの議論になります。ただ、今回のように全体に網をかけるような改革は、今までやられたことがないんですよ。
村山富市内閣のときも特殊法人改革が行われました。私も95年に首相と菅直人幹事長(当時さきがけ)に「やってくれ」と頼まれて、塩川(正十邸)さんをヘッドに政府系金融機関の統廃合をやった経験があります。あのときは開銀(日本開発銀行)と輸銀(日本輸出入銀行)をくっつけろという話ではじまり、結局、輸銀とOECF(海外経済協力基金)を統合しましたが、対立が続いて職員モラルまで低下してしまった。要するにただの数合わせに終わり、失敗したわけです。
だから今回は、どの法人をどうするかという、数合わせに陥りがちな議論ではなく、事業の類型ごとに論点整理をし、廃止するもの、民営化するもの、独立行政法人やそれに準ずる組織によって行うべきものと分類する。その結果を見れば、組織をどうするかは、おのずから明らかになると思います。

たとえば政策金融の事業類型を例にとると、あまりに貸し出しが大きすぎる。9法人で173兆円、日本の金融機関の総貸出600兆円の3割もあるわけです。この他に27の特殊法人が20兆円貸していて、合わせると政府系金融機関が国全体の32.5%もの貸し出しを行っている。
これでは民間金融機関が商売をやっていけるわけがありません。こんな国は世界中のどこにもない。まるで社会主義の国ですよ。それで、その原資は何かといったら国民の郵便貯金であり、年金であり、簡易保険なわけです。自分たちが国に預けたカネを自分たちが借りている。そこを改めないといけない。これが日本の金融を歪めてるんです。だから不良債権の処理が遅々として進まない。
公益法人の改革をどうする!?
五十嵐:確かに見直しの必要なカネ食い虫の特殊法人が山ほどあります。不要なものは即刻廃止されるべきですが、この廃止が実は難しい。民間なら倒産法で処理できるが、特殊法人にはそれぞれの設置法があり、どれも永遠に存続することが前提になっているんです。だから廃止の手続きがない。そこで、道路公団の廃止手続法とか、水資源公団の廃止手続法といった個別の法律をつくっていくか、あるいは一般法として政府関係機関全体の廃止法みたいなものをつくることになるのでしょうか。また内容によっては、第三セクターというものにも広がっていくと思いますが。
五十嵐:それについての議論はこれからですが、私個人としては、個別法になるんじゃないかなと思っています。特殊法人はおのおので特性が違うから、個別法で解散手続きをやっていくしかないんじゃないかと。
難しいのは、特殊法人の子会社のようになっている公益法人のほうですね。これがたくさんあるんですが、公益法人は明治31年に法律が施行されて以来、法的には民間の事業だから、行政の側が潰すことはできないんですよ。けれども実態としては特殊法人とつながっている。当然、公益法人についても考えていかないといけないわけで、これが実は悩ましい問題なんです。
五十嵐:公益法人は法理論的にも、どう処理したらよいか、いろいろ難しい問題があります。あまり強引にやると内閣法制局とも衝突しかねない。
石原:法制局は「やっぱりあれは民間だ」と言っていますね。他にも、出資金や補助金が入ってる法人、あるいは官僚が天下っているような法人のうち、今の括りだと外に出ちゃうものがまだたくさんあるんです。たとえば社会福祉法人などはこの議論の外にいる。この大臣室の窓から見えている20階建ての「新霞が関ビル」、あのビルも社会福祉法人の持ち物で、その中に道路公団も入っているんです。
五十嵐:だから、改革ももっと広げていかなくてはいけない。人事とか財源とか、とにかく何かがつながっていれば、それはまとめて改革するしかないんだろうと思いますよ。少しこの問題を大きな流れで考えてみましょう。特殊法人改革というのは、公共事業全体のうち、事業を実行する組織の改革です。しかし小泉内閣が注目されているのはそれだけでなく、それらを手がかりに公共事業そのもの、つまり道路特定財源とか、長期計画の見直しに手をつけるという点ではないでしょうか。
“犠牲者”はどれだけでるのか
石原:公共事業そのものに手をつけていくということで好都合なのは、来年とか再来年にかけて、道路などの整備計画が終わるわけですよ。その時点で小泉内閣が続いていれば、道路にせよ何にせよ、所管官庁にやらせずに、内閣としてどうするのかということができる。ただ、それは内閣が2年間続いてなきゃだめだけど(笑)。今途中で計画を変えるということは、政治的な力学からいっても法律的な問題からいってもできません。ただ、計画が終わった時点で小泉内閣が存続していればできるんです。
五十嵐:特殊法人だけでなく、公共事業全体の改革の問題に合わせて、失業といった社会的問題についてもお聞きしておきたい。塩川大臣がGDPに対する公共投資の割合を、現行の6.2%から10年かけて2%まで下げたいと発言しておられます。公共投資を2%にするということは、現行の43兆円から30兆円ぐらいを削るということです。そうすると、大半のゼネコンが倒産し、かなりの失業者が出てくる。公共事業で食べている人が660万人だから、単純計算すると400万人が職を失うということになる。
五十嵐:その数字はただの掛け算で、そのままでは議論できません。公共事業に従事している人だって、正業としてそれだけをやっている人の数はそれより相当少ないはずです。そして、雇用に影響があるから、改革すべきでないとは言えません。企業が倒産する、雇用が影響を受けるといって、改革を先送りにしてきた結果が、今の日本なんですから。ただ、改革には、痛みもありますが、得るものも多い。総理もあまり「痛み、痛み」と言いすぎてはいけないんです(笑)
行政改革をやったらおカネが浮くじゃないですか。特殊法人には毎年5兆3000億円がつぎ込まれているわけですよ。この1割のムダを省くだけでも5300億です。2割省いたら1兆円を超えますよ。半分の5000億円を借金返済にあてて、5000億円を教育や社会保障に使う。うまく特化してやったら、逆に社会はすごく明るくなります。
五十嵐:そううまくいくかどうか(笑)。特殊法人改革に限らず今回の改革はそのまま実現していくと、犠牲者を続出させる可能性がある。土光臨調(臨時行政調査会)が取り組み、橋本首相も改革に手をつけたけれど、それは犠牲者を出さないというものであった。だから逆にいうと2つあった組織をあわせて1つにしたとか、名前を変えただけという中途半端なものに終わった。
しかし、今回の改革はこれまでよりもはるかにスケールが大きい。したがって、犠牲者の数も比較にならない。その意味でも、この改革が断行できるのは、国民からの圧倒的な支持のある小泉内閣しかない。人気のあるうちに断行しなければなりません。
特殊法人は「お化け屋敷」
石原:そう、今しかない。そして公共事業とひと口に言っても、全部が全部不要というのではありません。必要な分野もたくさんあります。たとえば下水道の整備などは、日本は先進国でいちばん低い、その一方で不要な公共事業も多い。これはあくまで私個人の考えですが、神戸空港は要らないでしょう。また、地方で国際空港化したところが、半分ウィングが空いてしまっているところなど、みんなが困っているんです。
五十嵐:そうおっしゃるのは石原さんだけで、今まで長良川河口堰にしても、あるいは諫早湾の埋め立て、神戸空港、静岡空港にしても、与党議員や官僚の口から「不必要だ」という言葉が出たことがありません。もちろん知事や地方議員といった人たちも、みんな賛成側でした。そしてこれらの人たちに共通する特性がある。それは自分たちの失敗や間違いを絶対に認めないということです。後でそれらの事業が中止になっても誰も責任をとらず、平気で職が続けられる。それは日本政治で誰も理解できない謎でした。
五十嵐:要らないものは要らないとはっきり言う私のほうが異常なのかな(笑)。でも私は理屈に合わないことを主張する人たちには「あなた方のほうがおかしいんじゃないですか」と言って歩きますよ。
先日、鹿児島のある町長さんが「補助金をもらって道路をつくったら、400万円余っちゃった。でも予算主義だから返せない。これはムダですね」と話していた。それだけ全国でおかしな現金主義でムダが生じているんですね。これからは私も率先してダメなものはダメ、ムダはムダと言います。そうしないかぎり何も変わらない。そしてもし失敗したら、はっきり間違いを認める。責任はとります。
責任をとらない、失敗を認めないという日本の社会がいけないんだと思います。失敗したって、またその失敗を糧に敗者復活ができる社会をつくらなければいけないのに、日本の場合は1回失敗したら、もう「おまえは社会の落伍者だ。1回会社をつぶしたらもうダメだ」というような社会になっている。だから、失敗しても失敗ではないとウソにウソを重ねて粉飾決算したりする。そうしたメンタリティが日本人にはあるんですね。これはぜひとも変えなければいけないところです。
五十嵐:そもそも、政権が交代するということも、その政権の政策が間違いだったということを認めて退陣するということでなければならないはずなんです。しかし細川内閣も村山内閣も、どの政策が変わったのかよくわからない。公共事業はその典型でした。
石原:ところが現実には、政権交代しても「行政の継続性」とか言ってそのままやっている事業もある(笑)。
五十嵐:小泉政権になって完全に変わったことが1つあります。今まで見えなかった言葉が見えるようになってきたということです。たとえば道路特定財源という言葉は、これまで誰も知らなかった。でも今は学生でも知っていますよ。そのくらいに日本語になってきた。政策が変わるということは、言葉も代わるということ。公共事業という言葉だって今や言葉から受ける意味は前とは完全に異なっている。これが抵抗勢力を打ち破る一番大きな力なのです。特殊法人という言葉が日本語になるかどうか、それは石原さんの手にかかっているんですよ。
石原:いろいろなところで話しているんですが、現時点ではまだピンときてもらえない。それで私は「特殊法人はお化け屋敷だ」と言って歩いてるんです(笑)。「何が出てくるかわかんない」と。やっぱり国民の皆さんに関心を持ってもらうということが最大のポイントでしょう。「なんだ、特殊法人? 失業者が何万人も出るんだったらそのままでいいじゃないか」なんて言われたら元の木阿弥だから、そうならないよう、全力で頑張りますよ。
