メディアに掲載された石原伸晃関連記事を以下よりご覧頂けます。

諸君!
2001年 6月号
「四騎の会」は何を考えているか
附「総裁選候補」全格付け
派閥の論理で動いていてはお先真っ暗。
政治家は今こそ、将来のビジョンを国民に示せ!
- 衆議院議員 石原伸晃
- 衆議院議員 塩崎恭久
- 衆議院議員 根本 匠
- 衆議院議員 渡辺喜美
四騎、早春に起つ
石原:「四騎の会」について、あちこちのメディアで話題になっています。「石原新党の中核部隊か?」なんて穿った見方までされるようになりましたが、これほど大きく取り上げられるとは夢にも思っていなかった。これは根本さんの責任だから、彼に説明してもらいましょうか。
根本:えっ? ……まあいいか(笑)。われわれは、石原さんと親しくしているうちに、お父上の石原慎太郎都知事とも、お付き合いさせていただくようになりました。それで三月十三日、たまたま自民党大会の日だったんですが、その晩に食事を御一緒させていただいたとき、僕が冗談で「もうひとつの党大会ですね」なんて言っていたら、都知事が「君たち、『ヨンキの会』をつくれよ」とおっしゃった。初めは「四期の会」だと勘違いして、石原さんは当選四回だから四期だけれども、僕が三期、(渡辺)喜美さんが二期、塩崎さんが二期プラス参院一期で三期だから合わないなあ、と思っていましたが、そのうち都知事が、喜美さんのお父さんのミッチー(故・渡辺美智雄元副総理)さんは頭のいい人だった、なんて青嵐会当時のお話をされたから、若くて生きのいい奴らという意味で「四騎」か、それは面白いからつくろうということになったんです。
渡辺:出典? さあ、それはよくわからないんです。
塩崎:一方的にネーミングされただけ。
根本:僕らにとっては父親の世代にあたるので、「つくれ」と言われると、つい「はいっ」と答えてしまう(笑)。
石原:後で人から聞いたところでは、むかし黒澤明、木下恵介、小林正樹、市川崑の四人の映画監督が、映画会社に頼らず自分たちでよい映画を撮るためにつくった会らしいです。
根本:なるほど。とにかくそれで結成したんですが、直後の三月十八日に、僕の地元の郡山で「早春の集い」という集会があった。
石原:その集会にこの四人で出ることは、以前から決まっていたんですが、せっかくだからお披露目をすることにした。
根本:四千人ほど入った会場で、四人のバトルトークをやりました。政局編が三十分、政策編が三十分で、最後が「四騎の会」の立ち上げです。結成のエピソードを話して、西から四国の塩崎恭久、東京の石原伸晃、関東の渡辺喜美、不肖私、東北の根本匠ですと、改めて順番に紹介して、一人ずつ立ち上がったら、会場はウワーッと盛り上がりましたね。終わったあと、それまで自民党に批判的だったという女性から、「この四人なら自民党も変わるだろうし、好きになりそう」と言われました。
石原:あくまで地元サービスのつもりだったんですよ。そうしたら、地元紙の一面に出てしまった。
塩崎:四人が手をつないで挙げている写真入りで。
石原:全国紙にも載ったから、野中さんや古賀幹事長が、「一体何をやる気だ!」と目を光らせはじめた。四月十一日の両院議員総会でも、総裁選の方式について喜美さんが発言したけれど、あの四人組がつるんでやっていると思ったに違いない。
派閥にしがみつく執行部
塩崎:この日の両院議員総会が、今の自民党を覆っている息苦しい雰囲気を象徴していましたね。
渡辺:森さんの後継総裁の任期と総裁選の方式について、河野太郎さんが動議を提出して、私が賛成意見を述べました。
新総裁の任期は、森さんの任期である九月までではなく、本格政権たりうる任期にすべきだということを主張しました。次の参院選は自民党にとって天下分け目の関が原の決戦にあたるのに、九月までの暫定大将で臨むなんて、合戦の前に敗北を認めるようなものだからです。
また総裁選については、執行部の案が国会議員票三百四十六に対し地方票が各都道府県につき三票で計百四十一票。これを衆院の小選挙区につき一票、すなわち三百票とするよう訴えました。
いまの自民党が国民からソッポを向かれているのは、森さんが総裁に選ばれて以来、派閥の論理だけで動いているからです。今回も、国会議員の票だけで選べば、当然最大派閥の推す候補が当選しますが、この期におよんで派閥の論理を押し通そうというのでは、国民の信頼を失っている現状への自覚と反省が全くない。自民党の危機に際しては、地方の意見も取り入れるべきだと思ったわけです。
塩崎:最近、党政治制度改革本部の幹事会で、総裁選挙の新規定の骨子をまとめましたが、実はそこで、地方票と国会議員票の数を近づけるという方針は決まっていたんです。べつに九月の総裁選を待たず、今回から適用してもいいわけですが、立候補に必要な推薦人の数を三十から二十に引き下げるのは認められたのに、こっちはダメだった。
石原:動議に賛成した人の方が多かったんですが、まだ時間があるのに発言が許されなかった。
根本:僕が衆院に初当選したときは、自民党が野党に転落する寸前だった。だからすごく危機感があって、両院議員総会でも若手がどんどん手を挙げて喋ることができたし、それで執行部の案をひっくり返すことができたんです。それに比べると、今回の両院議員総会はね。
石原:古賀幹事長は、今まで地方票が各都道府県に一票だったのだから、三票になったのは前進だと言っています。しかしその裏には、まあ三票くらいなら、議員票をきちんと押さえれば勝てるだろうという意識が透けて見えるんですよ。
渡辺:こういう、派閥システムを温存しようというやり方では、自民党に未来がないことに気づいていない。
塩崎:さすがに今回は、鉄の結束を誇り、しかも派閥システムの元祖ともいえる橋本派の中から、派閥の決定に縛られない選挙を主張する動きが出てきた。その事実を執行部はもっと深刻に受け止めるべきです。
根本:ただ僕は、派閥というものを単純に否定しようとは思わないんですよ。政策集団という側面もあるし、各派閥に総裁候補とそれをもり立てる人たちがいて、切磋琢磨すれば党の活力にもなる。それに、こういう大きな集団なのに人事課がないわけだから、グループ内でメンバーを選んで人事を調整することには意味があると思います。もちろん、それが行き過ぎて締め付けになってしまうと、派閥は解消すべきだということになります。
塩崎:野党を経験したあと、一応人事委員会を作ったんですが、結局ここ二、三年で派閥が堂々と復活してしまった。かつては、現職の大臣は派閥の集会には出席しなかったのに、今は当たり前のように座っているし、人事は、派閥代表が集まって談合するポスト分捕り合戦です。面白いことに、無派閥の人にも、ちゃんと幹事長室に無派閥担当がいて、希望を聞いてくれるんですよ。
渡辺:派閥システムの本質は、競争回避、摩擦回避のメカニズムです。誰でも派閥に滅私奉公さえしていれば、年功を重ねることで出世できる。五回生で大臣だから、重役会に入るのに早い人で十三年、遅い人でも十六年。そして、重役会に二、三回入るうちに勤続二十五年を迎えて、派閥の親分になれるかどうかがわかってくる。YKKでも派閥の親分になるまで二十八年かかった。森さんは三十年、小渕さんは三十三年。つまり、政治家としての賞味期限が切れた人しか、総理総裁にはなれないわけです。こんなシステムでは、変化の激しい時代に対応できるダイナミックな発想は生まれません。それなのに、まだ惰性で派閥システムにしがみつく人が多い。
根本:それに加えて、小選挙区の導入で、執行部とくに公認権を握る幹事長の力が強くなりました。「加藤の乱」の時に、その影響は如実に現われましたね。
石原:ただ、権力を持っていても、行使する執行部と行使しない執行部があるでしょう。
塩崎:そういえば森さんは、幹事長としては強面ではなかった。
石原:九八年の金融国会のころ、執行部から「朝まで生テレビ」に出てはいけないというお達しがあったけれど、森さんは「喜美君はまあテレビでのパフォーマンスもうまいから、行っていいよ」なんて言っていた。あのころはまだ寛容さがあったけれど、今の執行部は、脅し、すかし、怖い顔と三拍子そろって(笑)、権力を行使するんですよ。
塩崎:今度の総裁選挙でも、テレビに出るには選挙管理委員会の許可を受けろというお達しが来た。
石原:そんな言論統制をやってはいけませんよ。党の姿勢が内向きであることが見え見えじゃないですか。
渡辺:せっかく党の現状と将来について危機意識をもったとしても、派閥と執行部の両方から圧力をかけられるものだから、物が言えない。まさに恐怖政治です。
根本:でも古賀さんの仕事ぶりを見ているとそこまで言うのは。
ビジョンと言葉を持て
塩崎:イギリスやオーストラリアのように議院内閣制をとっている国の議員に、派閥があるのかと聞いたら、やっぱりあるというんですね。しかしそれは、基本的には右、中道、左と、要するに政策で分かれている。人事の機能もあって、右の派閥から出ている大臣が辞任したときには、やはり右のグループから出すそうです。しかし、自民党の派閥は単なる人的な繋がりでしかない。
確かに、右肩上がりの時代なら、政策は霞ヶ関の官僚に任せて、政治家は権力闘争と利益配分だけをやっていればよかった。けれども今は、財政的に非常に厳しい状況だから、税金の使い方をギリギリのところで決めなければならない。にもかかわらず、大きな政府で行くか、小さな政府で行くかという大まかな方針すら派閥単位ではたてられないわけです。
根本:役所に案を書かせると、いいものは上がってくるかもしれないけれど、どうしても縦割りになってしまうからね。しかも少子高齢化、赤字財政の下では痛みを伴うことをやらなければならないから、よけいに官僚には政策調整が難しい。政治家に期待されるのは、官僚の案を各省庁と徹底的に議論しながら横断的に纏め上げることで、それこそが本当の政治主導です。
渡辺:行政改革で、大臣・副大臣・政務官として七十名近くの国会議員が政府の中に入るようになったのも、そのためですよね。その中心となるのは首相官邸のはずですが、森さんの時代には官邸よりも影響力がある人が与党に何人もいた。だから、株価が下がって金融システム不安が起きたりすると、官邸は対策を与党に丸投げ、与党は官邸を抜きにして緊急経済対策をつくるなどということがおきる。こうした権力の二重構造の下では、国家の意思が見えないから株が売られ、円が売られ、つまり日本が売られてしまう。
根本:しかし、これから本格的に政治主導の時代を迎えるとすれば、政治家には民意に反応するスピードや冷静な分析力がいっそう求められますね。特に、説得力あるビジョンを提示する能力は重要だと思います。
たとえば社会保障の問題については、将来が不安だという声が良く聞かれる。しかし、ここ数年の間に行なわれた改革は、実は明確なビジョンに基づくものです。地元でも、きちんと説明すればわかってもらえましたから。
まず厚生年金は、世代間扶養、つまり子供が退職した親を養うという仕組みですが、少子高齢化によって将来世代の負担が重くなり過ぎるために改革をしました。その内容は、支給額の伸び率を調整すること、支給開始年齢を六十歳から六十五歳に引き上げること、そして六十五歳以上でも収入の多い人には少し返上してもらうことですが、それだけで年金の支給額を下げずにすむ。もちろん、二十五年間かけて、六十五歳まで働ける社会にすることはいうまでもありません。
石原:支給額が下がるという誤解があるんだよね。支給額が二割カットされるという言葉だけが先走りして、パニックになってしまった。
塩崎:二〇二五年の時点で、国が払う年金の総額が、現行の制度を続ける場合よりも二割減るということなんです。一人ひとりの額ではない。
根本:一方、寝たきりの不安については、介護保険を導入しました。最重度の人は月額三十五万円ぐらい介護費用がかかるとされます。自己負担額は三万五千円になるので、負担が重いといわれるけれど、十倍のサービスが受けられるわけだから、不安は解消されると思います。さらに、年をとると生計費は減っていくから、七十五歳で寝たきりになったら、特別養護老人ホームに入る場合の自己負担は六万円弱でいい。それは基礎年金の六万六千円でまかなえるんです。
日本の金融資産が千三百八十兆もあるのは、老後の不安も大きかったと思います。だから、これからはそんなに貯金しなくていいし、その分をぜひ消費に回してもらいたい。病気になったら医療保険、寝たきりになったら介護保険、将来の所得保証は年金、というのは世界に冠たるシステムだと思います。
塩崎:社会保障のように、おじいちゃん、おばあちゃんから赤ちゃんまで国民一人ひとりにかかわる問題については、われわれは地元でわかりやすく説明して、そこで聞いた意見をまた東京に持って帰って議論しようとします。ところが、先日与党と政府の社会保障改革協議会というところで、大臣、幹事長、政調会長クラスが四回集まって、社会保障改革大綱という四枚のペーパーが出てきた。議論の前に、大枠を決められてしまったんです。
石原:連立政権になって以来、政策が党内でボトムアップで出てくるのではなく、連立与党の幹事長、政調会長レベルで作られるようになった。初めに、もう変えられない大枠を決めた上で、議論してくださいというのでは困る。
塩崎:しかも、そこには「セーフティーネットとしての社会保障にふさわしい範囲」なんて言葉が入っている。セーフティーネットなんていうと、最低限の保証しかしないように思われてしまうでしょう。また、「老人医療費を経済成長率とかけ離れないように」などと言われると、年をとれば誰でも悪いところが出てくるのに、成長率によって医療の質を抑えられてしまうのかという疑問が生じる。確かに、財政と社会保障は両立させなきゃいけないんですが、お役所言葉で言われると、不安が増してしまう。だから、国民に政策を伝える仕事をお役所任せにするのでなく、政治家が自分の言葉で説明しなければならないのです。
ただちに不良債権処理を
塩崎:さきほど政治家にはスピードが必要だと言いましたが、過去の失敗も、すぐに認めるようにしないと、傷が深くなってしまう。その典型的な例が、この「失われた十年」です。九〇年代はずっと不況が続いていたけれど、その原因が不良債権問題にあり、それまでの政策には間違いもあったということを認めたのは、ようやく九十八年の金融国会のときでした。
石原:そのときに、われわれが中心となって「土地債権流動化トータルプラン」と「金融再生トータルプラン」を作った。
根本:さらに、銀行への六十兆円の公的資金投入を認めた「金融機能早期健全化緊急措置法」や、破綻処理の手続きを定めた「金融機能再生緊急措置法」を成立させて、不良債権処理の政策体系を、八割方作り上げました。
塩崎:ただ、銀行に対する資本注入のやり方を少し間違えたことも事実です。あの時点で、貸出先の企業がどれだけだめになっているか、つまり銀行の資産がどれだけ劣化しているかを明らかにすべきだったんですが、それをしたらパニックになるといって、早期健全化法で優良行というフィクションを作り上げ資本注入するにとどめた。でもそれは、元気な人にもっと元気になりますよとドリンク剤を飲ませただけで、経営者の責任も問えなかったし、不良債権の規模を甘く見ていたわけです。
石原:世間の目も、公的資金注入に集まったため、不良債権処理という本質が見失われ、問題が金融界の再編に矮小化されてしまった。
塩崎:しかもその後は、財政出動による景気回復策が優先されるようになる。三年間で百十兆から百二十兆ぐらい借金をしたんですね。小渕前総理は「世界一の借金王」なんて開き直る始末でした。
根本:ケインズ型の財政出動を支持する人たちは、三年前の消費税率アップが不況の原因だと言っていますが、値上げの三ヵ月後には消費は回復している。原因は、あくまで不良債権なんです。そして金融不況。
渡辺:不良債権というガン細胞は外科手術で取り除くしかないのに、資本注入という麻酔や財政出動というカンフル剤だけを打つだけだった。日銀は、デフレを押さえるために、とうとう通貨の量的緩和という輸血まで始めましたが、肝心の手術には相変わらず手をつけない。おまけに、国債の格下げというカンフル剤の副作用まで出始めています。
根本:不良債権の処理には、もはや一刻の猶予も許されない状況です。直接償却によって土地を大量に処分すれば資産デフレがおこる、としてためらっているのなら、銀行から不動産担保付債権を買い上げることで土地を流動化させればいい。石原さんと僕の名前で「週刊文春」四月十二日号に発表した「日本経済サバイバルブラン」の要点の一つはここにあります。三年もすれば資本市場全体が回転し始めると思います。大事なのは、産業の再生、雇用の創出・流動化、金融緩和。政策をパッケージとしてやることによって経済はよみがえる。
悪しき「政治主導」
塩崎:僕は自分のホームページに「経済再生十年ビジョン」というものを載せています。これは、まず二〇〇二年までに不良債権処理と産業構造改革を進める。ついで二〇〇五年までの三年間に、当面の財政均衡を達成し、最後の五年間で、歳入・歳出構造の抜本改革を伴う財政再建を達成するというものです。先の「サバイバルプラン」でもいいですが、こうして何らかのビジョンを示すことができれば、たとえ当面の状況は苦しくても、国民はきっとわかってついてきてくれると思います。しかし、この十年間で、それをした政治リーダーは一人もいなかった。
渡辺:結局、不良債権問題を解決すべき政権が、「不良政権」になっているんですよ。連立やら派閥やらのせいで、与党の政策にまったく整合性がなくなっている。森政権の末期、三月九日に出された与党三党の緊急経済対策なんて、その最たるものです。たとえば産業再生の為には、生産性の低い過剰債務業界を再編しなければならないけれど、同時に提言されている株買取りをやれば、そういう業界のボロ株を買い取り機構がかき集めて、延命させてしまう。本来、個々の政策が有機的に関連しあって効果を発揮しなければいけないのに、そういう矛盾する政策が、まったく議論されることなく別々につめこまれてパッケージされる。まるで幕の内弁当です。
根本:さすがに役人は優秀で、一つ一つの施策はもっともらしく見えないこともないけれど、一貫した思想がない。
塩崎:トータルプランをわれわれがつくったときも、こちらでメニューを考えると、官僚はそれぞれの施策について何省の何局の何課がやると分担して、実際そこだけをタコ壺みたいにやってきた。省庁横断どころか、局横断、課横断で筋の通った政策をつくることさえ、彼らには難しいんですね。
根本:だから政治家の役割は、そこにあるわけです。特に不良債権処理のような、各省庁にまたがるようなテーマに関しては、政治家が主導権を持って、各省庁と議論してプランを叩いていかないと、よりよい政策は生まれない。
石原:ただ、政治主導だというのを履き違えている政治家もいて、筋ワルなことでも押し通そうとして、役所を困らせたりする。
渡辺:今回の緊急経済対策は、本当に筋が悪いですからね。これを作った政治家の方々に本音を聞いて、私は唖然としましたよ。銀行も事業会社も三月末の株価が心配でたまらないから、政治家も何かやっているふりをしなければならないというだけなんです。
石原:今回の株式取得機構の政策的な目的は、商業銀行が一般事業会社の株を大量に持っていると、株価の変動に銀行が一喜一憂することになるので、それをなんとかしようということです。銀行は自己資本の枠内まで株式のウェートを減らしていくから、余分に持っている株は全部売ることになる。それによって市場に悪影響が出るのを避けるために、政府ができることはないかということで、今回の機構を考えた。
渡辺:しかし、銀行の持っている持ち合い株式をかき集めてダメ会社を延命させるのであれば、すべての株を国が買い上げて、会社に対する議決権を行使するところまでやらなければ、政策の整合性がとれない。それでは国家社会主義そのものじゃないですか。銀行が持っているのは、ボロ株ばかりじゃない。実はいちばん多く持っているのは自動車株なんです。トヨタのような超優良企業の経営に国が口を出すなんてことが考えられますか。
塩崎:最初に株買い上げの案を出した相沢英之元金融再生委員長は、議決権を行使すると言っています。ワシントンには、「日本が共産主義宣言をした」と受け止められている。
これほど重要な問題は、本来ポスト森を狙う人たちが争点にすべきものなんですよ。ところが、どういう政治体制でこれを実行するかなんて議論はやらずに、総裁選挙の前に決めてしまった。しかも、森さんが辞めると発言した日にですよ。そんな馬鹿なことがありますか。
石原:この緊急経済対策は、株価対策から始まって、最後には政局のおもちゃにされたわけですよね。経済対策を口実に、亀井さんをはじめ執行部の延命を図ろうとしたと疑われても仕方がない。
そもそも、政府が株を買って株価を上げようという発想自体が筋ワルです。四月五日付けの英フィナンシャル・タイムズ紙が、「これも仕方がない」と言っていますが、それは、日本経済が異常事態だから、こういう異常な政策も認められる、という皮肉の込められたロジックでした。
渡辺:産業再生、つまりダメ企業の再編、淘汰を進めていけば、当然銀行の資本増強が必要になる。その正しい方法は、普通株を注入するか、優先株を議決権つきの普通株に転換して、銀行経営者の責任を追及するということです。いわば、口から食べ物で栄養を補給することにあたる。しかし、銀行の持っている持ち合い株式を公的資金で買い取って、損失が出たらそれを税金で穴埋めするというのは、口ではなくてお尻から入れるという話なんです。これでは、栄養とならずに、全部出てしまいます。
石原:汚いなあ(笑)。
渡辺:毒々しいのは父親譲りです(笑)。
根本:われわれは品のよさが売りなんだから(笑)。
総裁候補を格付けする
渡辺:経済対策をきちんとやるためにも、今度の総裁には本格政権になってもらわなければ困ります。そこで私は、政権が不良になるかどうかを判断するための、十項目の格付けポイントを考えてみました。
第一に、派閥システムこそは自民党政治の諸悪の根源だから派閥のしがらみからの自由度が問題となる。年功序列、派閥均衡を破壊できるパワーがなければいけない。
第二に、本格政権になりうるか否か、つまり暫定政権の傀儡性を払拭しているかが問われる。おそらく自民党は過半数を取れないから、連立の枠組みについても明確なビジョンを持っていることが必要です。
第三に、世代交代が促進されるか。派閥の領袖と長老の支配から脱却し、新しいエネルギーを吹き込まなければ。
第四に、日本と世界の現状に対する危機認識と、これを乗り越える強い信念が求められる。「確信の人」こそ、今の時代にふさわしい。
第五に、ダイナミックな政策構想力と、問題解決の戦略的思考を持ち合わせていること。タテ割りのシステムを排除し、真の政治主導を実現するために不可欠な要素です。
第六に、やる気と情熱が必要。ただ、これには責任感の裏打ちが必要です。心情倫理に流されて、どんどん借金してばら撒けばいいという無責任な政治は絶対に排除しなければいけない。
第七に、直観力と決断力。非常事態に臨んだときにこそ政治家の真価が問われるわけですから、これは不可欠の要素です。
第八に、国民との間に信頼関係を構築できる説得力です。言葉の力は重い。
第九に、国際性。これは、英語が話せるかどうかではなく、国益を考えて日本の立場をアピールできるかどうか、その交渉力と迫力を持っているかということです。
第十が、清潔度。これだけ政治がスキャンダルまみれだと、人身が倦んでしまいます。聖人君子を求めるのは無理でも、排気ガスが許容限度内におさまっている必要がある。
この十項目について、今回の総裁候補の四人、橋本さん、小泉さん、麻生さん、亀井さんの点数をそれぞれ十点満点で採点しましょう。で、合計点に基づいて、上から順にAAA、AA、A、BBB、BBで格付けする。ちなみにBB以下は投資不適格のジャンク債(笑)。
根本:四人の評価はこれから出すとして、愛党精神から言わせてもらうと、自民党は他の政党に比べたらずっといいと思いますよ。
石原:じゃあ、野党からも、民主党の鳩山さんと自由党の小沢さんをいれよう。あとせっかくだから編集部にも採点にくわわってもらいましょう。
塩崎:まず「派閥からの自由度」ですが、橋本さんは零点に近いでしょう。
渡辺:小泉さんは派閥を離脱したけれど、森内閣のときの反省があるかないかで違いますね。
塩崎:麻生さんは、推薦人を借りたことで他の派閥まで面倒を見なければいけないから、ほとんどマイナスですね。民主党に派閥はないでしょう。
石原:いや、あるんだよ。人が三人いれば二つ派閥ができると言うじゃないか。
渡辺:小沢さんは派閥そのものだな(笑)。次は「本格政権の度合い」です。
石原:亀井さんは、いい悪いは別として本格政権でしょう。
渡辺:麻生さんは……傀儡だな。
石原:「世代交代の推進」は、みんな零点だ。
塩崎:小泉さんは五十代で、麻生さんは六十だから、少しいいでしょう。
石原:これに関しては、鳩山さんはいい。
次の「危機意識と強い信念」だけど、橋本さんは高いでしょう。もう一度行財政改革をやらせてくれといっているんだもの。
根本:十点にしたらいい。小泉さんも十点だ。
塩崎:小沢さんも十点じゃないの。
渡辺:亀井さんは零点だな。
石原:いや、方向はともかく信念は強いから。
根本:次の「政策構想力と戦略思考」ですが、橋本さんはわりといいでしょう。
石原:小泉さんは、意外と低いかもしれない。
渡辺:郵政民営化と行革と財政再建だけじゃダメですよ。
根本:小沢さんには、わりとあるけれど、ちょっと方向が違っている。
塩崎:「責任を持った情熱」です。
根本:橋本、小泉、麻生はまあまあ、亀井さんは……独りよがりの責任はあるかもしれない。
渡辺:やる気はあるけど、責任はともなってないからなあ。鳩山さんは、情熱がちょっとたりないよね。
石原:小沢さんも、ありそうでないんじゃないか。
根本:ないのかなあ。独りよがりの情熱かも知れない。
次の「直観力と決断力」は、亀井さんは間違うこともあるが十点だと思う。
渡辺:間違ってると困るんだよ。
塩崎:橋本さんは、わりと悩むらしいよ。でも金融ビッグバンを決めたぐらいだから少し評価できる。小沢さんは結構あるでしょう。
渡辺:「国民との信頼関係」は、橋本さんないでしょう。一度失敗してるから。亀井さんは?
塩崎:これはないんじゃない。
渡辺:過剰債務業界というか、オールドエコノミーのほうからはあるでしょう。
石原:施しの政治だからなあ。
塩崎:小沢さんはあまり信頼されていないよね。
渡辺:でも一部にファンがいるでしょう。比例区では、彼一人の人気で六百万票入ったくらいだから。
根本:「国際性」だけど、橋本さんは、交渉力があると思うよ。小泉さんは英語もできる。
塩崎:英語じゃなくて、国益意識をもっているかどうかでしょう。小泉さんにはあまりないように見えるけど、未知数だね。小沢さんはあるでしょう。
石原:アメリカだけだよ。
渡辺:これも未知数でしょう。では最後に、「清潔度」。
塩崎:これはみんな今ひとつだなあ。鳩山さんもあまりない。小沢さんは、女性関係は清潔だろうけど。
根本:竹下派だから、金はどうかな。
渡辺:さて、以上の結果を採点して、四人プラス編集部の平均をとってみましたが、集計の結果、小泉さんがAAでトップ、橋本さんと小沢さんがシングルAで、亀井さんと麻生さんは、BBBだからギリギリですね。
根本:AAAの政治家なんてまずいないけれど、こんなことを言っていると、正常債権のはずのわれわれが直接償却されちゃうかもしれない(笑)。
塩崎:四騎がいきなり討死しちゃうよ。
石原:いやいや、四騎の会は四人だけじゃないんです。討死どころか、これからどんどん増えていきますから、国民のみなさんにも、われわれの活動を見守っていただきたいですね。
| 「総裁選候補格付け表」 | |
| 橋本龍太郎 | A |
| 小泉純一郎 | AA |
| 麻生太郎 | BBB |
| 亀井静香 | BBB |
| 鳩山由紀夫 | B |
| 小沢一郎 | A |

