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政界インタビュー
“朝令暮改”でない税制を
「哲学」ある住宅と街に
住宅産業新聞 10月4日
- 石原伸晃
- 自民党・衆議院議員 党税制調査会幹事
- いしはら・のぶてる
- 昭和32年東京都出身。53年米ニューヨークのエルマイラ大に留学。56年慶応義塾大文学部{都市社会部}を卒業後、日本テレビ入社。平成2年に衆院初当選後、衆院大蔵・商工委筆頭理事などのほか第二次橋本内閣では通産政務次官を歴任。平成10年には衆院金融安定化特別委理事として議員立法による金融再生法を成立。現在、衆院環境委筆頭理事のほか党税制調査会幹事、党金融問題調査会会長代理。東京8区、当選4回。
―先の衆院選結果を受けて党再生に尽力されていますが、選挙の敗因は都市政策の欠如にあるという声もあります。
石原:いや、僕はそう思いません、だって民主党にも都市政策はないんですからね。僕個人は、自民党の“うさん臭さ”が国民から拒絶されたんだと思っています。例えば選挙に負けたのを素直に認めなかったり、公共事業を政争の道具にしたり、また年功序列や長老支配、朝令暮改といった自民党独自のシステムが国民に受け入れられなかったのでしょう。
都市政策は、自民党が1番やっていますよ。都市計画法も見直したし、住宅税制もどちらかというと地方よりも都市に重点を置いています。中心市街地活性化法や街づくり三法も(?議論?)をしてつくりました。「これだけやっている」という宣伝をしていないだけです。
―住宅税制では、建設省から来年度改正要望が出ましたが、以前から提唱されているローン利子の所得控除は「引き続き検討」と付記されました。
石原:そもそも現行のローン減税は2年間の時限措置だったのを半年延長した経緯があった。短い期間に特化した減税だったから景気対策として効果があったわけです。しかし、その延長線上でいじり回すのではなく、一から全く新しい税制をつくったほうが住宅政策としては意味があると思うんですよね。自民党の“朝令暮改”的手法ではないですが、毎年毎年システムが変わるようなコテ先の減税ではなく、ローン利子所得控除のような恒久減税にしたほうが、国民に対しても筋が通るというものでしょう。
現行の減税制度は、経済波及効果が大きいという点だけに着目してつくったわけで、特定の時期だけにマイホームを買った人だけが恩恵を享受できる極めて不公平な税制ですよね。適用期間が1ヵ月でも過ぎたら恩恵にありつけない(笑)。逆に言うと、これだけ不公平な制度だったから、着工戸数が120万戸まで回復するという効果があったんです。しかしその景気も回復軌道に乗り始めてきているのですから、このあたりで臨時措置ではない恒久的な「ローン利子の所得控除制度」を新しく創設すべきだと思います。
■買い替え層にも波及
―要望では、控除期間を10年と15年から選択できる「選択式減税」がうたわれています。
石原:所得の高い人は控除率の高い方を選んだほうが控除額が大きくなってトクですよ、という制度ですよね。結局、現行減税の延長です。むしろ総減税額は縮小している。今までの経済政策的減税を急にゼロにしたら困るから、激変緩和措置として設けられた窮余の策というイメージが強い。
いつかは2年半という締め切りが来ることは分かっていたんですから、その後に据えるべき税制の姿を考えておくべきだったんです。一次取得者だけでなく二次取得者層も動いて、住み替え・買い替えのエンジンがかからなければ、本格的な景気回復は望めない。しかも現在、資産デフレで苦しんでいる既存ローン債務者も救済しなければならない。現行制度ではこれらの政策がバラバラになってしまっています。
―二次取得者層といわれる40〜50代は「資産価値の下落」「収入不安」「中古市場の停滞」という三重苦に苦しんでいます。
石原:一般に、住宅需要の波は「新築マンション」→「新築戸建て」→「中古マンション」→「中古戸建て」という順で波及しますが、これまでの政策はいつも最初の「新築マンション」段階で終わってしまっています。だから毎回特別なものをつくる羽目になる。本当はこれらの4段階がうまくまわるような誘導政策にしないといけないと思うんですよね。
―既存ローン債務者に対する配慮は、「明日を創る会」パートナーの渡辺喜美議員も「個人再生法」などで強調しています。
石原:ええ、この人たちは苦しいながらも真面目にローンを払っているんですね。だから各金融機関がこぞって住宅ローンに力を入れるんですよ。その銀行は国から公的資金を注入され、ゼネコンが債権放棄を認められるというのに、モラルハザードも甚だしい。こんな不公平なことばかりやっていたら、既存ローン債務者が「俺たちもローンを払うのやめた」と、いつ投げ出してもおかしくない。
■要求官庁に覚悟必要
―ローン利子所得控除を既存ローン債務者にも適用するという方法も考えられます。それを建設省が「検討事項」に踏みとどめたのは、どうも大蔵省の顔色を見ているような気がしますが。
石原:本当は大蔵省でなく国民の顔を見るべきでしょう。要するに建設省も“予算ありき”で考えていて、1兆円は多すぎるからその半分くらいにしましょう、という感覚ですよね。ローン利子所得控除については私も数年前から口を酸っぱくして言ってきていますが、毎年不毛な議論に終わっていて正直ウンザリしますよ。
確かにローン利子所得控除は申告制を土台にしていて、日本の源泉徴収体系にはなじみにくいのも事実です。しかし控除というのは所得税の世界ですから、控除をするなら所得税体系そのものを根本から見直すくらいの覚悟がなければ。要求官庁側にその覚悟がなければ結局何も変わらない。建設省は昔から「河川や道路をつくってほしい」と要求ばかりする体質です。「日本の街を住宅をこうしたい」という哲学がない。そういう役所的な発想が世間に通じる時代は終わったのです。
―街づくりという視点では都市計画法が改正されました。
石原:街づくりにはどうしても強制収用が必要になります。やはり私有権と公益のバランスを考えて街づくりをしていかないと、街がどんどんまた悪くなっている。相続が発生して土地が分割されて、100坪あたりの土地に4軒くらいの家がひしめいて建っています。そうしないと4千万円台で売れない。2008年から日本の人口が減少に転じるというのに、1軒あたりの敷地が狭くなっていくというのは逆行しています。
―地価は9年連続で下落していますが、地価下落による資産デフレも懸念されています。
石原:経済再生のためにも下げ止まってもらいたいと思いますが、地価ばかりは統制が効きません。全世帯の6割を占める持ち家資産の目減りということを考えると、できればGDP成長率の8割くらいのペースで地価も上昇してもらうのが望ましい姿ですが、地価というのは結局は需給関係で決まりますからね。
したがって、資産デフレに苦しむ既存ローン債務者に制度配慮する必要はありますが、現在のような個別の制度を継ぎ足すのではなく、一次取得者と全く公平な恩恵が与えられる新しい制度が待たれます。景気回復のカギを握る民需に火を付けるためにも、ローン利子所得控除の一刻も早い創設が待たれるのです。
