コンパス

石原のぶてる's オピニオン・羅針盤(コンパス)

平成10年5月号

春の訪れを告げるものには、いろいろありますが、国会で仕事をしている私は、その年の予算案が成立したときに春がきたと強く感じます。今回の平成10年度予算案は、例年よりも1ヵ月も成立が遅れ、現在のわが国の経済状況の厳しさを象徴する事態となりました。

昨年来の東南アジア諸国での通貨危機に始まった混乱や銀行の貸し渋りなどにより日本経済は不況を脱していません。予Z案を成立させるのに先立って、ともかく金融システムを安定させるための緊急措置の成立に努力してきましたが、これだけではまだ足りません。新しい年度を迎えて、これまでバラバラに打ち出されてきた政策をひとまとめで投入していくことが求められていると思います。

さて昨年来、私どもは財政改革に取り組んでまいりました。その結果、今年の公共事業の額を前年に比べ7%削減する。2003年度に赤字国債の発行額をゼロにする。同じく2003年度の財政赤字の額をGDP(国内総生産)の3%以下にする。前年に比べ、赤字国債の発行額を減らす。という内容の財政構造改革法を成立させました。

国民の多くの方々は、国の借金を子供たちの時代に先送りするような案には反対だと思います。また、財政赤字を解消することでは意見が一致しています。しかし短期的にみますと、まず大切なことは景気刺激策を打ち出して景気を浮揚させる。そして、その間に不安定な金融システムを浄化し、経済が活性化しやすいように税制の枠組みを変え、規制緩和もおこなっていく事です。このシナリオというものをいまこそはっきり打ち出さなければなりません。

つまりボクシングにたとえると「ワン・ツー・パンチ」の政策です。これまでの政策は、いってみればジャブの連発。今後は政策を小出しにしていくジャブの連発ではなく、「ワン・ツー・パンチ」で日本の将来を見すえたグランドデザインを示していかなければならないのです。

私の考える景気浮揚策 日本の経済を回復基調にもっていきます。

まず実行しなければならないのが、この不景気の根底にある不良債権の処理です。日本の146の銀行が抱える不良債権は約80兆円の巨額に達しているともいわれます。その大部分を大手19の銀行が占めていますが、この不良債権の処理に手をつけずに日本経済の復活はありえません。そのため金融機能安定化緊急措置法というかたちで法的な手当てをおこないました。後はいかに実行に移していくかということです。もちろんこれは、銀行だけを救済するものではなく、各金融機関の経営責任を徹底的に追及したうえで、公的資金を導入するものです。そうしないと国民の皆様の支持は得られません。

 私が現在たずさわっているのがこの不良債権をいかに償却していくかという問題です。このため例えば不良債権を時価共同債権機構で買い取り、それを競売や証券として市場に売り出す、同時に土地を流動化させる、など具体的な政策を実行します。
不良債権の処理、景気の刺激策、また税制改革。これに加えて規制緩和をしていくことで、日本の経済を回復基調に持っていく。それが本年度の最大の仕事だと思っています。
例えばカゼをひいている患者さんに熱さましを与えるだけの政策ではダメだと思います。やはりカゼの根本原因であるウィルスをを退治するような政策を打ち出し、実行していく事が必要です。とにかく金融システムの安定化と経済対策を一刻も早く実施していかなくてはなりません。
日本はいまや最大の財政赤字を抱える国になってしまいました。しかし、高度成長期以降の国民の皆様の努力により、個人の金融資産は1200兆円もあるのです。心配は要りません。

現在の日本の状況を糖尿病にたとえてみますと、わが国の借金体質を変えようというのが財政構造改革です。高い血糖値をクスリや食事、運動によって下げていこうという努力は本当に辛いものです。治療中にちょっと過激に運動すると、一時的に低血糖におちいることもあります。いまの日本がまさにこの状態。日本はたいへんな高血糖を落とそうとしている最中ですが、そのために国の経済が昏睡状態になってはどうしようもありません。そんなことにならないように、短期的には景気をとにかく浮揚させることが一番で、長期的には財政再建が不可欠。
とにかくできることは何でもやるといった心掛けで、本年度もがんばっていきたいと思います。

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